2021年12月10日スペインの閣議において、復興・変革・強化計画のマイルストーンの一つとして、EUにおける起業家精神の促進を目的としたEUスタートアップ国家基準または一連の実践の基準に対応するスタートアップエコシステム(通称「スタートアップ」)の促進に関する法律案をスペイン国会に提出することが合意された。
2021年12月31日に当事務所ホームページに掲載された記事「スタートアップ企業に関する法律案 (前編)」では、法案の最初の編(第I編及び第II編)で定められている民事と商事の基本的な法的枠組みについて説明した。
本稿ではその後編として、第III編、第IV編、附則第3の内容を扱う。
第III編は、海外投資及び優秀人財確保のためのインセンティブについて定めている。
第10条は、スペイン国籍を有さない自然人でスペイン新興会社へ投資することを望み、スペイン居住者でない者は、外国人識別番号(NIE)を取得することなく、税務署に税務識別番号(NIF)を申請しなければならないと定める。投資家が法人の場合には、NIF申請を行う法人を代表者である個人も自身のNIFを取得しなければならない。会社の代理権は公正証書又は税務上の代表者への就任承諾が明確に記載される契約内にて確認されなければならない。海外の公正証書にて会社代理権が確認される場合には、その内容をスペイン法制度に適合させることは求められない。税務署は、このための電子手続きを設け、必要書類が添付された申請書の提出から10営業日以内にNIF番号を発行しなければならない。
第11条は、株主総会は、報酬プラン実行を唯一の目的として、取締役、従業員又は他の協力者に提供するために、最大で資本の20%の自己株式の取得を承認することができると定めている。なお、この報酬プランは定款にあらかじめ規定され、株主総会の承認を受けていなければならない。当該株主総会の承認においては、以下の3点が含まれていなければならない。(i) 報酬プランの各実行において分配される自己株式の最大数、(ii)自己株式の価値、(iii)報酬プランの期間
会社による自己株式の取得については、次の要件を満たさなければならない。(i)当該株式について全額の払込がされていること。(ii)投資が行われた時点における純資産の額が会社の資本金と資本準備金の総額を下回らないこと。(iii)当該自己株式の取得は株主総会による承認日から5年以内に行われること。
第IV編は、新興会社設立にかかる公証人及び登記官の登記手続きと料金について定めている。
- 設立及びその他の会社行為にかかる登記所要期間は、登記申請提出日の翌日から起算して5日とし、標準的な定款の場合には、電子定款のオンライン受領日の翌日から起算して1日以内に登記官は当該定款を確認し、登記するものとする。
株主間契約は登記が可能であり、法に反するような条項が含まれない場合には、登記による公示力の恩恵を受ける。
- 公証人及び登記官の手数料、及び商業登記官報での公示にかかる料金は無料であると定めている。
附則第3は国際テレワーク(コンピュータ、電磁的、電気通信の手段とシステムを独占的に使用することによって、国外に所在する企業のために遠隔地で仕事や専門的活動を行うためにスペインに留まることが認められた第三国の国籍保有者)の概念、居住者としての状況及び国際テレワークビザについて定めている。
今後の国会審議の過程で当該法案に変更が加えられることが予想される。遅くとも2022年9月30日には同法が施行されるよう、2022年夏までにこの審議プロセスを終了させることが目標である。
ボスク・ミレイア (Mireia Bosch)
ヴィラ法律事務所
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2022年1月7日