2021年12月10日スペインの閣議において、復興・変革・強化計画のマイルストーンの一つとして、EUにおける起業家精神の促進を目的としたEUスタートアップ国家基準または一連の実践の基準に対応するスタートアップエコシステム(通称「スタートアップ」)の促進に関する法律案」をスペイン国会に提出することが合意された。

当該法案は、民事と商事の基本的な法的枠組みによって構成されている。

I編は、以下のような一般規定を定めている。

1.- 以下の要件を満たす自然人または法人を「スタートアップ企業」(第3条)とするコンセプトに関する規定。

a) 新規設立会社、または設立5年以内、もしくは、バイオテクノロジー、エネルギー、工業系のセクター場合は設立7年以内の会社のであること。

b) 合併、会社分割、組織変更から生じたものでないこと。

c) スペイン国内に主たる住所または恒久的施設を有すること。

d) 従業員の少なくとも60%がスペインにおける現地雇用契約を有すること

e) 革新的企業であること(現状の技術水準に比して新しい又は大幅に改善された製品・サービスやプロセス開発を通じて、既存の問題解決や状況改善を行うことを目的とするが、技術または産業的失敗のリスクを伴うことでもある。)。

f) 株券配当をこれまで行った事が無く、行わない。

g) EU取引市場及び多角的取引機関に上場していない。

h)スペイン商法第42条に基づく会社グループに属する場合、当該会社グループは上記のすべての要件を満たす必要がある。

2. 政府機関であるENISA(Empresa Nacional de Innovación S.A.)による会社の革新性認定及び各年更新の必要性。(第4条)

3.制度の恩恵を受けるための法定条件(第5条)。

会社及びその投資家は、以下に当てはまる場合、提供される便益を利用することができなくなる。

a) 会社の設立から5年又は7年を経過し、第3条に定めるスタートアップ要件を満たさなくなった時。

b) 上記期間に達する前に会社が解散した場合。

c) 新興会社の地位を有さない他社に買収された場合。

d) 年間売上高が500万ユーロを超える場合。

e) EUタクソノミー規則(持続可能な投資促進のための枠組み構築に関するEU規則)第2020/852号の観点より、環境に著しい損害を与える活動を実施している場合。

f) 設立発起人又は取締役が、何らかの犯罪行為で裁判所から有罪判決を受けたことがある場合。

g) 商業登記所への登記(第6条)。

新興会社である場合、商業登記所にその旨が登記事項として記載される。登記官は、第3条及び第5条に定める要件を満たしていることを確認する。商業登記所に新興企業として登記されることは、本法の規定の恩恵を受けることができる必要かつ十分な条件であるとされる。商業登記所は、会社の設立年及び新興企業との地位を最低限含む、無料のオンライン確認手続きを提供する。

II編は、以下のような税制優遇措置を定めている。

– 法人税及び非居住者所得税の税率は、課税所得がプラスになってから最初の4年間は25%から15%に引き下げられる。

– ストックオプションの行使により派生する株式又は出資持分の譲渡の場合、ストックオプションの非課税枠が年間12,000ユーロから50,000ユーロに拡大される。有限責任会社(S.L.)における自己株式の取得条件がより柔軟化される。

– 新規設立会社への投資に対する控除額の上限が引き上げられ(年間6万ユーロから10万ユーロ)、控除率及び新規設立期間も引き上げられた(一般的に3年から5年、特定の企業については7年に)。

– 法人税または非居住者所得税の納税猶予は、課税所得がプラスになってから最初の2年間とされ、当該期間中について保証も延滞利息も要さない。

– 課税所得がプラスになった年の翌年以降2年間の法人税及び非居住者所得税の分割納付の義務が撤廃された。

今後の国会審議の過程で当該法案に変更が加えられることが予想される。遅くとも2022年9月30日には同法が施行されるよう、2022年夏までにこの審議プロセスを終了させることが目標である。

 

 

ボスク・ミレイア (Mireia Bosch)

ヴィラ法律事務所

 

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2021年12月31日