本稿では、ドメイン名は、資産の不正使用の場合に成立する罪の対象になり得るかを検証する。

スペイン最高裁判所第二小法廷は、直近の判決で、インターネット・ドメイン名に関連する横領罪について初めて判断を下した。

具体的には、最高裁判決第1464/2022号がこれに該当し、被告人4名が、所属宗教団体の所有ウェブサイトのドメイン名を流用したとして、高等裁判所が横領罪に該当するとした判決を無効とした。

当該宗教団体は、布教活動のためにドメイン名「www.alfatelevisión.org 」でウェブサイトを作成し、銀行やPaypalの口座とリンクさせて寄付を集めていた。

被告人らは、当該団体とは別の独自の宗教法人団体を設立し、前述のPaypal口座のパスワード及びドメイン名のパスワードを変更して旧団体のURLへのアクセスを遮断し、ウェブサイトを使用不可能とした。これらすべての行為の後、元団体の理事会は、被告人4名を団体職を解任した。

グアダラハラ県裁判所は、ドメイン名は法人資産、つまり流用可能な資産としてみなされるべきであり、したがってその行為は横領罪を構成するとして、被告人らを有罪とした。

この有罪判決を不服として被告人は上告し、最高裁によって上告が受理され、本稿にて検証する判決によって解決された。

最高裁は、被告人が元の宗教団体の職員であったときに当該事実が発生したため、被告人の行為は横領罪の構成要件に該当しないとの見解を示した。

この結論に至るにあたり、法廷は会社のドメイン名を資産とみなす根拠について分析し、次のように述べた。「ある会社の資産にドメイン名を含めることは、その経済的価値故に、疑う余地なく肯定されるが、そのドメイン名の不正使用イコール犯罪を構成するという結論を容赦なく導くものではない。」

つまり、ドメイン名及び商号は資産の性質を有し、横領罪の対象物となり得るとここでは結果づけている。

しかしながら、最高裁は、刑法第253条に定める横領罪の構成要件では他の要素の存在を要しており、本事案において見受けられないと理解した。

最高裁は「不正使用の対象物を最大限柔軟に解釈したとしても、「資産」という表現の抑制は新刑法第253条でカバーされる「不当」の箇所の制限を意味するものではなく、この経済的価値のある対象物が「預金、手数料又は管理品として受領されたこと、又はそれらを引渡し又は返却する義務を生じさせるあらゆる役職によって被告人が信頼されていたことが必要不可欠である」と、述べた。

そして、最高裁は当該事実(URLへアクセスするためのパスワードの変更)が、理事会による被告人らの解任日よりも前に発生しており、したがって、被告らが団体内で有していた権限の利用及び役職機能の行使であるから、横領罪について問うことはできないと結論づけた。

最後に判決は、ウエブサイトのドメイン名の不正使用が犯罪を構成する可能性があるケースとして、ドメイン名の使用により、第三者に、本来利益を得るべき者に有利な支払いが行われていると信じ込ませ実際は他者が利益を得るといった、錯誤を生じさせるような詐欺に該当する可能性の分析で終わっている。

最高裁は、ドメイン名の不正使用が、「商標によって保護されている権利(スペイン刑法第270条、273条以降)を弱体化させる手段であり、産業又は知的財産権に対する犯罪を構成する」場合には、工業財産や知的財産に対する犯罪や、コンピュータによる妨害行為を構成する可能性があると理解を示したものの、本事案において対象となっている行為は、これら犯罪の構成要件に該当しないと結論づけた。

 

 

クアドラド・アレシュ (Aleix Cuadrado)

ヴィラ法律事務所

 

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2022年5月6日