PUNTO FA社は運輸会社であるTRANSNATUR社と、ドイツ、ニュルンベルク所在のSPEDICAM LOGISTIK GmbH社の建物から、スペイン、ラ・コルーニャのArteixo所在のJEVASO社の建物まで繊維製品をトラックで輸送するための契約を結んだ。

当該製品の輸送のため、TRANSNATUR社は、同社のドイツにおける代理店であるSPEDICAM LOGISTIK社と下請け契約を結び、SPEDICAM社はさらに実際の輸送を担当する会社であるIMPORTEX社に外注した。

輸送の最中、当該輸送を担当した運転手は、スペイン国内の休憩所で、義務付けられている休憩時間を取るために停止した。この休憩時間中にトラックで輸送されていた商品の大部分が盗まれた。この盗難は、運転手が寝ている間に発生し、トラックの幌が切られる形で行われ、特定されていない窃盗の犯人は、輸送中の商品2,145キロのうち673キロを盗んでいった。

運転手は、窃盗が行われた翌日にサン・セロニの警察署に、発生した事実及び盗まれた商品を記載した被害届を提出した。

トラックがEl Prat de Llobregatに所在するTRANSANTUR社の建物に到着すると、 CMRの書類に書かれた商品の引渡しに瑕疵があることを理由とする引渡しの見合わせが行われた。

原告であるAXA SEGUROD GENERALES, S.A.(保険法第43条により被保険者の地位を承継した)は、運送会社に対し国際道路物品運送条約(CMR)第27条に基づき、商品価値相当の請求を行った。他方、被告であるTRANSANTUR社はCMR第23条3項を主張し、同条の定める不足する商品の重量1キロあたり8.33計算単位を上限とする責任の限定を要請した。

バルセロナ商事第2法廷は、CMR第23条第3項を適用し、被告の責任を認定した。その理由として、電気は点灯していたが防犯システムの設置はされておらず、そのことを表示する立て看板が置かれている場所に駐車をした時点で輸送者の過失があり、防犯システムが設置されている近隣の場所に駐車をしたのであれば盗難は避けられたかもしれない、と述べた。

この裁判所の判決に対し原告は、輸送者は、貨物が幌のみでしか囲われていないトラックで輸送しているということを知りながら監視システムのない場所に駐車をしたのであり、これは過失のみならず未必の故意も有していたという主張のもと、控訴を行った。さらに、本件類似の事案にて出された2015年7月10日付最高裁判決で示された見解も、その主張を裏付けるものとして加えた。CMR第29条は、前述のCMR第23条3項の責任の限定または立証責任の転換は、当該損害が故意又は当該土地の法令に照らして故意に相当するものと認められるような責任のある過失の場合には、適用されない。

原告から提出された控訴を担当したバルセロナ県高等裁判所第15法廷は、 その判決において、上述の最高裁判決は「意図的に追い求めなくとも、ある行動から導かれた結果は、故意的な行動の結果であると理解されるべきである。」と述べた。

契約の不履行(民法第1101条)において適用された有罪認定は、したがって、刑法上の故意、すなわち、損害を与える意思という概念ではなく、意識的かつ自発的な義務の不履行を想定している。この点について、2009年4月21日付最高裁判決では、故意の範囲を悪意又は意図に限定する必要はないことについて議論がされ、したがって、損害を与える意図によって生じた損害のみではなく、悪意という概念において、自発的に法の規範に抵触するという事実で足りる、つまり、当該行為が法に反する行為であり、やるべきでものではないことを認識していることで足りる。

したがって、現実に根ざした状況において、バルセロナ県高等裁判所第15法廷は控訴事件2017年244号を結審する2017年6月13日付判決において、運送会社又は運送を実際に行った者が注意管理義務を怠ったので、損害のすべてについて責任を負わなければならないとした。幌のみで囲われている商品の輸送という状況については、運転手はより防犯がされた場所を探す等監視方法を徹底すべきであったとした。

最終的に、被告に対し盗まれた673キロ分の商品全部についての支払いが命じられた。金額は、Comisario de Averías社が鑑定書で定めた1キロあたりの金額に従って定められた。

これにより、バルセロナ県高等裁判所は故意又は帰責の検討及びこれが認められるために必要な要素(故意の行為が存在するために損害を発生させる意図や自主性は必要ない。)についての最高裁の見解の拡大解釈を採用し続けることとなった。

 

 

マルチネス・マーク (Marc Martínez)

ヴィラ法律事務所

 

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2017年9月8日