スペイン資本会社法第393条は、「株主の満場一致による同意がある場合を除き、清算配当を金銭により受取る権利を株主は有する。」と、株主への現物配当による清算を認めている。

問題は、この満場一致の同意の発生時点をいつすべきかを決定する点にある。

法的安全・公文書管理局(以下「公文書管理局」という。)の2019年2月14日付決定(法第12296/2019号)は、清算人が株主に対して、いくつかの駐車スペースと駐車及び倉庫用の店舗を現物分配し会社清算する内容の2018年5月15日付公正証書の登記を、以下の2つの理由から登記官が拒否した案件に関する判断を示した。

  • 比例分配、平等の取り扱い及び完全給付の原則を保護する資本会社法第393条違反
  • 1963年10月8日、1968年6月14日、1983年3月1日及び1985年5月31日付最高裁判決違反、及び、1968年2月13日付及び1997年11月5日付の登記・公証局決定違反

会社の清算人は、登記拒否決定を不服として申立てを行い、以下の前提事実を説明した。

  1. 2015626に開催された会社の臨時株主総会では、会社の清算方法及び株主への分配に関し、駐車スペースからなる会社の不動産を、不動産鑑定士が設定した価値に基づいて、株主の持株比率に応じて分配することが全会一致で承認され、公正証書化された。
  1. 公証人立会いのもと2016622に同社の臨時総会が開催され、2015年6月26日付臨時総会の決議内容に基づき、各株主に対し、持分に応じて呼応する割合の駐車スペースまたはその一部を抽選・譲渡により分配することが合意された。そして、清算貸借対照表が承認された後、分配公正証書が作成されることとした。当該決議は、資本の25%の賛成票で承認され、反対票は24.75%であった。
  1. 2017613、株主に対する現物(不動産)分配のための抽選公正証書を作成した。
  2. 公証人の立会いのもと、2018129に臨時総会が開催され24,75%の株主は分配への反対票を投じた。
  3. 2018515、清算貸借対照表の承認と株主への会社資産の分配を公示する清算公正証書が作成された。

同時に、清算人は以下の法的根拠を主張した。

  1. 株主総会決議は、法人の一方的行為であり、賛成票の投票者だけではなく法人の全(株主総会)構成員を拘束する。(スペイン資本会社法第259条)
  2. 2015年6月26日に開催された株主総会では、株主の持分割合に応じて、所有不動産群を分配することで、残余財産の分配を実行することが全会一致で決議された。当該決議に異議を唱える者なく、そのため異議申立て請求は時効となっている。仮に登記の中止が決定された場合、2015年6月26日に全会一致で採択された決議に対し、事実として異議申立てが認められたこととなる。
  1. 2015年6月26日に採択された決議では、会社の清算の方法と株主間での残余財産の分配が全会一致で承認された。これをその後の2018年1月29日の株主総会で変更することは、禁反言の法理に反することとなる。

公文書管理局は、本件に対する不服申し立てを却下し、以下を理由として登記の拒否を確定した。

・会社清算時に特定の財産の分配によって株主の権利を満たす場合には、清算の結果残る財産に対する全株主の権利を保証するために、清算計画が承認された後に、株主への財産分割金額・分配方法が決定された時点で、全会一致での株主の決議承認が行われることが不可欠である

・スペイン資本会社法は、当該分野で完全な規定を有せず、会社資産の分割が財産分配行為であるという性質を考慮すると、相続財産分配を規定する規則(例:民法第1.708条および商法第234条)、及び民法1.059条および1.061条で確立された満場一致および平等の原則を考慮しなければならない。

結論として、2015年6月26日付株主総会において全会一致にて可決されたような、分配方法に関する具体的な方法を決定していない「事実上」分配の一般的な決議では不十分であるとした。その上で、2018年1月29日付株主総会で可決された清算貸借対照表と残存財産分配案を承認する決議は全会一致ではなく、資本の24.75%を代表する株主から明示的な反対があったため、スペイン資本会社法第393条に定められた、清算計画の承認後に、分割可能な会社資産の確定と株主への分配方法の決定時点にての全会一致の要件は満たされていなかったのと判断を示した。

 

ボスク・ミレイア (Mireia Bosch)

ヴィラ法律事務所

 

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2021年7月23日