2022年3月9日付最高裁第4法廷判決(判決番号: 1005号)において、ある合同会社(S.L.、以下「本件会社」という。)において経済・財務のアドバイスを行なっていた会社経営者兼株主兼取締役(以下「上告人」という。)と本件会社との関係性についての分析がされた。

最高裁は、結論に達するために、以下の前提事実及び法的根拠を述べるところからまず開始した。

前提事実

  • 2011年3月1日、上告人は本件会社と、月額固定報酬制の財務コンサルタントサービス契約を締結した。
  • 当該契約日以降、上告人はスペイン社会保険において個人事業主として加入していた。
  • 2012年1月17日、上告人に対して広範な権限を与える委任状が作成された。当該委任状は2015年4月20日に取消されたが、同日付で新しい委任状が上告人に対して作成された。
  • 2015年6月12日、上告人は本件会社の取締役に選任された。
  • 2016年10月16日、上告人は本件会社の出資持分18%を取得した。
  • 2017年8月30日付本件会社の取締役会議事録により、上告人に対し取締役会から、下記の事項が通知された。(i) 上告人への委任状が取消されること、(ii) 上告人との財務コンサルタントサービス契約が解除されること、(iii) 本件会社の本社及び類似する建物へのアクセスを禁止すること、(iv) 本件会社から上告人に与えられていたクレジットカード及び会社から貸与されていた機器について返却しなければならないこと
  • 2018年12月12日、カスティーリャ・ラ・マンチャ州高等裁判所の労働裁判法廷は下級審により出された判決を確認する形で判決をくだし、上告人が提起した解雇訴訟について、上告人と本件会社との間に雇用関係はなかったとして、訴えを退けた。

法的根拠

上告人は、本件会社との雇用関係の存在を主張し、カスティーリャ・ラ・マンチャ高等裁判所判決内容に反する判例を提示した。その概要は以下のとおりである。

(i) 当該判決が出された訴訟においてもやはり会社に対して訴えがされたものであった。

(ii) 当該訴訟も取締役会決議内容に対して提起されたものであった。

(iii) 当該判決の当事者もまた取締役会構成員であり、共同取締役としての権限を有し、会社の出資持分の19%を保有していた。

(iv) 同当事者の専門分野は営業であり、営業、顧客の管理及び維持を担っており、社会保険は個人事業主の特別制度に加入していた。

提示判例ケースの第一審では、雇用関係があったと判断し、懲戒解雇にかかる請求を部分的に認めた。これは高等裁判所でも確認がされ、それによれば、株主の雇用条件は確定的なものではなく、原告は自身の業務の対価として月額固定報酬を受け取っていたとして、原告が会社の代表及び経営職務を実施していたということを述べることなく、当該関係は雇用関係でもあった、との見解を示した。

本件においては、最高裁は上告人と本件会社間の関係が雇用関係だったのか商事関係だったのかを判断することに焦点を当てた。そのため、2017年9月28日付最高裁判決に言及し、ある株主が株主であること以外の他の職務を会社内において担う場合における雇用関係の排除は、以下の2つのいずれかの要素から生じる可能性があるとした。

  • 第三者性の欠如(会社資本の50%以上を有する場合)または
  • 依存性の欠如(会社の最高経営機関に属する者で、その典型的な職務機能が会社の代表や経営である場合であって、会社との関係が雇用契約ではなく取締役としての選任に端を発する場合、その関係は商事的性質を有することとなる。)

これらの該当者が会社と雇用関係が存在したというためには、一般または通常業務を実施している必要がある。取締役の職務と最高経営者の職務(マネージャーやジェネラル・ダイレクター)とが同時に担われる場合、この二重の拘束の唯一の目的は会社の最高管理と経営である。すなわち、取締役の職務はそれだけで会社の最高経営機能を含むものと理解される

最高裁は、関係性が商事なのか雇用なのかを定めるのは職務機能の内容ではなく、拘束の性質であり、したがって最高経営組織の構成員としての関係が存在するのであれば、その関係は雇用ではなく商事的なものであり、高度経営職ではなく一般管理職の依存体制における雇用関係の場合にのみ、管理職と雇用関係の同時履行が認められるとした。

結論

最高裁は、上告人によってなされた業務は取締役及びマネージャーとしての独自の業務であり、会社の経営組織との関係性が存在することから、商事的関係であったと評価すべき、と結論づけた。

 

 

ボスク・ミレイア (Mireia Bosch)

ヴィラ法律事務所

 

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2022年7月1日

 

 

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