2015年12月9日付けで、デジタルコンテンツ供給契約の一定の部分に関する欧州議会及び欧州理事会指令第634/2015号の草案が公示された。ソフトウェアやアプリケーション、その他のデジタル的性質を持つ商品が、一般的かつ頻繁に取引されるようになり、企業及び個人の生活が急速なデジタル化のプロセスに直面していることを考慮すると、当該指令の重要性は非常に高いものである。当該指令は、企業と消費者との間の、プログラム、動画、音楽コンテンツ等を含むデジタルコンテンツ及びサービスの提供にかかる契約に適用される。また、ソーシャルネットワークプラットフォームなどの特定のデータの共有を可能にするデジタルサービスの提供に関する契約だけでなく、 「クラウド」と呼ばれるデジタルデータ処理サービスまたはストレージサービス契約にも影響を及ぼす。

当該指令草案は、デジタル分野での国境を越えた事業取引をする上で、障害または障壁となるようなEU加盟国間の法的規制の相違を縮小することを目的としている。つまりは、デジタル単一市場の発展を目指しているといえよう。 同時に、供給側と顧客との間のその場その場で作られる契約によって、市場動向の定型化が困難あるいは不可能になる前に、この種の契約の法的取引を規制することを目指している。

2017年6月8日、欧州理事会は、当該指令草案について以下のような立場を採択した。

  1. 当該指令によって、デジタルコンテンツ及びサービスの使用料を支払うための契約条項のみならず、デジタルコンテンツの供給者が取り扱う個人情報を提供する場合における消費者救済に関する契約の条項も設けるべきである 。ただし、供給者が個人情報を専有的、及び排他的にサービスを向上させるために扱う場合、あるいは特定のデジタルコンテンツ提供、または特定の強行的な準則の遵守を目的とした場合は、例外とされる。
  2. 顧客と供給者の間で矛盾または不一致が生じた場合、当該指令草案によれば、供給契約の解除に先立ち、供給者側に第2の機会を与えるための権利が与えられる。
  3. 供給者の責任の期間に関して、当該指令はEU加盟国間の相違を完全になくすことまでには至っていないものの、一般的な期間として、提供されるコンテンツまたはサービスに適合しない場合の供給者の責任期間について、いかなる場合においても2年を下回ってはならないと定め、デジタルコンテンツの提供または取引の対象となるデジタルコンテンツにおいて紛争の可能性が生じた場合には、当該期間内に供給者への立証責任の転換が行われる。

当該指令は、会社規模によってサービス供給者を区別することは消費者の信頼を損なうとの理解のもと、大企業と中小企業の両方をその適用対象とすることを目指しいることは言及に値する。欧州議会が目指すのは、国境を越えて統一化された規制を備えたビジネス環境の提供であり、特定の契約条件を用意するための費用を負担する必要がなくなることにより中小企業、特に小規模企業にとって有益であるべきと考える。しかし、いくつかのケースにおいては、当該指令に基づいてEU加盟国が各国において制定する法律が、供給者又は顧客の規模や両当事者間に存在する特別な関係に応じて、補完または修正される可能性があるだろうと考える。唯一の要件は、前述の修正が消費者に損害を与えないことである。

本指令草案は、消費に関する契約法の強行法規的な性質を有し、指令に定める要件の逸脱が消費者に損害を与えるのであるならば、当該逸脱は消費者を拘束しないことを明確にする。

欧州議会によれば、当該指令で定められる措置が施行されれば、この種のビジネスにおいて10億ユーロの売上増加に貢献し、また、価格の下落をもたらすはずであり、したがって、消費の成長効果を生むだろうと期待される。

 

 

ヴィラ・エドアルド (Eduardo Vilá)

ヴィラ法律事務所

 

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2017年6月30日