2019年5月22日、デジタルコンテンツ及びサービス供給契約の一定の側面に関するEU指令第2019/770号が公示された。上記EU指令は、デジタルコンテンツ又はデジタル・サービス供給に関し、会社と消費者間において締結される契約に含まれるべき要件に関する一連の規制を取り扱っている。当該規制は、デジタルコンテンツ・サービス供給する事業者と消費者の間の契約が代金と引き換えに実行される場合に適用される。従って、サービスの提供が有償である場合は、本指令は、事業主と消費者の関係に影響を与える。
さてここでは、当該指令が、消費者が本供給に対して代金と引き換え(典型的な反対給付)ではなく、消費者の個人データ提供による場合にも適用されることについて具体的に言及しようと思う。
本指令の新注目点は、デジタルサービス供給者に対して消費者がほぼ無意識に提供する個人データの価値に重きを置いたことにある。しかしながら、消費者が提供する個人データが、他の目的に利用されることなく、コンテンツの供給又は法要件の遵守を唯一の目的として事業者によって使用される場合には、本指令は適用されない。
当然ながら、事業者がこれらのデータを他の目的のために、例えば商業上の直接又は間接的な使用を目的としていないことをどのように調査するのかを、我々は問う必要がある。
本指令の適用範囲は、消費者の要請に対しカスタムメイドされたデジタルコンテンツの開発契約や、デジタルコンテンツの配信者に排他的に役立つ救済措置にも同様に影響する。
事業者は、別段の取り決めがない限りデジタルコンテンツ又はデジタルサービスを契約締結後直ちに提供しなければならない。
以下に挙げる主観的・客観的な要件を満たしている場合に、デジタルコンテンツ又はデジタルサービスの提供は本指令に適合しているとみなされる。
a) 主観要件: 契約で定められたデジタルコンテンツ・サービスの数量、品質、機能性と、実際に供給されたものが一致していること。使用目的は契約書上消費者によって同意された目的に適合し、契約上定められた全ての付属品、説明書等とともに供給されること。
b) 客観要件: 本指令の規定条項のうち、デジタルコンテンツまたはサービスが契約締結時の要件への適合性が維持されるように、常に消費者に通知・更新しなければならない事業者の義務は言及に値する。デジタルコンテンツまたはサービス提供の契約期間中は当該義務を履行しなければならない。また、本供給が一度の行為(又は何回かに分割された行為)である場合は、コンテンツやサービスのタイプによって消費者が待機可能と「合理的に」判断する期間は、当該義務の履行を要する。同様に、別段の合意がない限り、デジタルコンテンツまたはサービスは、契約締結時に最新のバージョンで提供する義務がある。
「合理的」という文化的要素や、地域の習慣に関連し、普遍的な判断基準を持たず、各EU加盟国によってとらえ方が大きく異なるような用語がここで使用されていることは、特筆すべきであろう。
一度の供給行為又は一連の個別の供給行為を定める契約においては、事業者は契約が不適合となった場合の責任を負うこととなるが、本期間は2年を超えることはない。事業者に対し消費者が契約不適合の是正請求権の時効は、2年の期間内に明らかになった不適合性について本指令に規定する救済措置を請求することを認めるべきである。
一定の期間にわたって供給することを定める契約の場合には、事業者は供給契約期間内に生じる適合性について責任を負うとする。当該ケースでは、EU加盟国は供給契約期間内に発生又は顕在化した不適合性に対する救済措置を請求する権利を、消費者に認めなければならないという原則を適用する。
一般に、消費者のデジタル環境に関し消費者が契約を締結する前に事業者が明確に提供するデジタルコンテンツまたはサービスの技術的要件との互換性を説明しない限り、コンテンツまたはサービスの適合性に関する証明責任は事業者にかかる。
契約が適合していない場合に、本指令は以下の救済措置を定める。
- 事業者に適合を請求する。(適合性の欠如度合いに比例した)価格の値引き又は契約の解除。
- デジタルコンテンツまたはサービスを適合させることが不可能である、又は、適合のためには事業者に過度のコストがかかる場合、消費者は契約を解除した上で、コンテンツ又はサービスが適合している場合に相応した金額での支払いを要求することができる。
- 契約解除の場合、事業者は、契約締結に関連し支払われた費用を全て返金しなければならない。一定の期間にわたって供給することを定める契約の場合は、供給されたコンテンツ・サービスが適合されていない期間に対応する期間の代金のみを返金する義務がある。
- 契約解除の場合、消費者は、サービスの提供またはコンテンツの作成のために、事業者に提供したデジタルコンテンツ(個人データ以外)を回復する権利を持つ。
本指令は、加盟国の国内法への置換の期限はを2022年1月1日と規定する。
ヴィラ・エドアルド (Eduardo Vilá)
ヴィラ法律事務所
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2019年6月7日