連帯貢献メカニズムとは、ある選手の契約が終了する前に(国際的な)移籍が実行される際、育成に貢献したクラブに該当選手の移籍補償金支払い手続きに関し、国際サッカー連盟(FIFA)の選手の地位と譲渡に関する規則(Regulations on the Status and Transfer of Players)に規定されたメカニズムを指す。当該移籍金は、選手がかつて所属したクラブチームに対し一定の補償金受領を保証するもので、具体的には、「育成補償金 (Training compensation今後の記事にて言及予定)以外のあらゆる補償金の5%」との規定があり、「本補償金額は、移籍金から控除され、新しい所属先のクラブが、長期の間該当選手育成に尽力したクラブに対し連帯貢献として支払われるべきものである」とし、12歳から23歳の間所属したクラブが対象となる。
今回本メカニズムは、「転売条項」のような条項の存在により新たな問題抱えることとなった。転売条項とは、ある選手の移籍の際に、旧所属クラブが、選手の将来の移籍時にも移籍金の一定のパーセンテージの金額を受領可能とする契約条項を指す。(“移籍”のコンセプトの変遷と リーガエスパニョーラの契約“終了”条項を参照)
上記2つの法制度に基づき、FIFAの紛争解決室とも言えるDRC(Dispute Resolution Chamber)は、移籍金800万ユーロにて合意したある選手の移籍に関し、旧所属クラブが以下の
i) 移籍金全額 (800万ユーロ)及び
ii) 転売条項による金額 (300万ユーロ)
2つの支払いに対し連帯貢献金を受領する権利があると主張した、二種類の支払い義務 (2種類の補償金)に関する興味深い紛争の判断を示した。
選手の地位と譲渡に関する規則別紙5には、既に記述したように、選手の契約期間中の移籍の場合「あらゆる補償金」全額の5%を控除しなければならないとある。
本規則を誠実に理解すれば、育成にあたった旧所属クラブの意図は本規則の歪曲理解とみなされるべきである。つまり当該移籍は一定の金額(本件の場合800万ユーロ)を、選手が現在所属するクラブ(500万ユーロ)と転売条項の権利を有するクラブ(300万ユーロ)で分配されるとし、結果として、連帯補償金として徴収されるべきは、800万ユーロの5%にあたる金額と理解されるべきである。
しかしながらFIFA規則の該当文言に関し、DRC法廷は、連帯貢献金は、移籍に関連する各補償金にかかるべきであり、この場合は移籍金額及び、転売条項にかかる金額がこれに該当するとの判断を示した。
上記判断は、連帯貢献メカニズムにおいて2重請求にあたる状況を生み出すこととなる。というのも、「転売条項」に関する請求は、移籍金である800万ユーロにかかることは議論の余地がないからである。
しかしながら今回の判断は上記に矛盾し、育成クラブが800万ユーロの5%に、更に300万ユーロの5%を加えた、800万ユーロをベース金額とすると6,87%にあたる金額が連帯公献金として支払われることを義務付けた。
当該判断は、制度制定時の精神からの乖離を意味し、今後の選手移籍への連帯貢献のメカニズムに、移籍金の遅延支払い及び/または規定された条件の理解変動の対象となるといった、明白な影響を及ぼすこととなる。そして、DRC法廷への将来申立てに興味深い先例を残すこととなった。
テラン・アンドレアス (Andreas Terán)
ヴィラ法律事務所
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2019年11月22日