去る9月マドリード高等裁判所は、Sevilla F.C.(以下「セビージャ」という。)対 Unión Deportiva Las Palmas(以下「ラス パルマス」という。)間の紛争「ヴィトロ事件」に関する判決を下した。本件は「ヴィトロ」ことビクトル・マチン選手が2017年7月にセビージャからAtlético de Madrid(以下「アトレティコ」という。)へ移籍した際の、ラス パルマスが有する経済的権利に発端する。総額410万ユーロに上るラス パルマスへの支払いをセビージャに命じたフットボール仲裁裁判所(リーガエスパニョーラ機関)の裁定を不服として、セビージャは前述の裁判所に提訴したが、以下の事項を理由に申立ては却下された。

2013年ラス・パルマスとセビージャの間で、ヴィトロ選手のセビージャへの譲渡契約を300万ユーロにて締結した。本契約書第2条第3項には、条件を特定することなく、同選手の将来の「移籍」時にラス・パルマスが移籍金の12.5%を受領するという規定があった。

2017年7月、ヴィトロ選手はアトレティコと合意に至ったため、セビージャとの間に存在する契約の撤回条項(誤って「終了条項」と命名されている)に規定された金額にあたる総額(3,500万ユーロ)を納入する権利を行使した。しかしながらセビージャは、今回の移籍は選手個人の決断によるものであり、彼らがみなす「移籍」には該当しないとして、ラス・パルマスに対し本移籍にかかる規定パーセンテージの金額を支払わなかった。(セビージャ側は「移籍」とは、両クラブと選手の3者間合意によるもの、と主張した)

ラス・パルマスは、当該状況を不服としてフットボール仲裁裁判所判断を仰いだ。仲裁裁判所は仲裁過程の中で、問題となっている条項(ヴィトロ選手のセビージャへの譲渡契約第2条第3項にある)「移籍」という文言のコンセプトは広い意味解釈されるべきであり、選手自身による退団の決断と他クラブとの契約等を含む、あらゆる退団理由が当てはまるとみなす、と結論付けた。

上記フットボール仲裁裁判所による裁定をを不服として、セビージャはマドリード高等裁判所に提訴したが、原告側の脆弱性の欠如、仲裁裁定が公序良俗違反に該当しないこと、裁定無効の申立ての性質自体の問題追及の不可能さにより、最終的に却下された。

これにより、セビージャはラス・パルマスに410万ユーロに利子を付した金額及び、仲裁手続き費用を支払うことを最終的に命じられた。さらに、高等裁判所に対する仲裁裁定無効申立て費用も負担することとなった。しかし、当該判決は憲法裁判所で争われる可能性があるだろう。

本件は少なくとも、リーグ定款第92条規定によりフットボール仲裁裁判所に委ねるべき問題に関し、今後クラブと選手間の契約書内における「移籍」のコンセプトを解釈する際に重要な先例になると考えられる。

 

 

テラン・アンドレアス (Andreas Terán)

ヴィラ法律事務所

 

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2019年10月25日