スペイン・カタルーニャ州民法第411-9条第4項は、数人の相続人が相続の対象となる場合、相続人のうちの一人が相続の承認することで、遺産相続の状況は解消されると定めている。さらに、全共同相続人が承認しない、もしくは協議が成立しない間は、通常の遺産管理は遺産を承認した相続人が行い、これが複数人の場合は相続共同体の規則に従うと付け加えている。相続共同体は、遺産分割によって消滅する。2017年6月12日付最高裁第314/2015号判決は、「相続財産が未分割のままである限り、相続共同体の構成員はパートナーを形成できず、個別にパートナーとみなすこともできない」ことを想起した。
相続共同体は、共同相続人の一人が相続を承認した際に生じ、規定上、正式な成立を要せず、共同相続人の一部は承認し、一部は放棄することも考え得る。上記にかかわらず、相続放棄者も依然として当該共同体の一部を構成しており、相続共同体が行う決定には、今後説明される条件で、これらの者が関与しなければならない。
相続共同体の権限
相続を承認した相続人が複数人の場合、遺産の通常の処理又は管理行為は相続共同体の規則に準拠する。カタルーニャ州民法第411-9条は、遺産管理行為は相続共同体にかかる規則に準拠する旨を定めており、これによりカタルーニャ州民法第552-7条が適用され、同条において以下の2つの行為が提示されている。
- (a) 通常管理行為。共同所有者の過半数によって採決され、反対者はそれを受け入れなければならない。
及び
- (b) 特別管理行為。共同所有者の4分の3以上の過半数によって採決がされ、反対する共同所有者(共同相続人)は司法当局に対して当該決定について異議を申し立てることができる。
遺産が資本会社の株式又は出資持分である場合、当該株式又は出資持分の名義は、相続において各相続人が有する割合に応じて、共同体を構成する全員に属するものとみなされる。共同相続体が株主として認識される時期、その決定がどのように形成され表現されるかを理解し、通常管理行為と特別管理行為の境界を明確にすることが不可欠である。
a) 共同相続体が株主として認識される時期及び会社における共同体の代表者について、資本会社法第126条は、株式又は出資持分が共同所有の場合には当該共同所有者は株主の権利行使のために代表者を1名指定しなければならない旨定めている。この要件により、共同体を形成する構成員の代表者の選任が必要となる。
さて、遺産相続人の中には相続承認者もいれば、放棄者もいる可能性がある旨は上述した。また、第411-9条は相続人の中の少なくとも一人が相続を承認することによって相続共同体の成立を回避できる旨を規定していることも述べた。そうである場合、共同相続体の代表者は共同相続体を構成する相続人全員が参加する投票によって選任されなければならないだろうか?当事務所の意見はこれについては否定的であり、共同相続体の構成員のうち相続承認者のみの同意が必要と考える。なぜなら、法的相続人が(明示的又は黙示的に)相続を放棄した場合、当該相続人は遺産財産及び権利について自発的な引き受け行為を実行しておらず、したがって、当該相続人はそれらの管理に積極的に参加すべきでなく、また、参加することができないからである。それでは、黙示的に相続を承認した相続人についてどのような取り扱いがされるだろうか。相続承認者の間で対立があり、共同体の代表者を選任するための会議が妨げられるような場合、相続割合の過半数を有する相続人が単独でそれを行うことができる。そのような過半数を有していない場合は、代表者選任、もしくは、少なくとも、共同相続体の相続を受け入れた相続人の全員が適切だと考える候補者についてその意思を表示できることができると考える、裁判又は裁判外手続きを進める必要がある。
共同相続体が代表者を選任するとして、会社における権利行使はいつから始めることができるのか。スペイン資本会社法第116条は、株主名簿に登録がされている者だけが株主とみなされると確かに規定している。事実、株主名簿への登録により株主はその地位を取得する(2016年6月6日付最高裁判例第383号)。しかし、会社の取締役が共同相続体の存在及び適切に選任されたその代表者について把握しているにも関わらず、株主名簿への共同相続体の登録を自主的に拒否する可能性がある。この場合、株主の地位は取締役の手中に留まることになる。株主名簿への登録の形式要件は、司法手続きによる登録を申請しなければならず、相続共同体の会社における権利の行使を妨げ、それによって生じた損害について取締役に対する損害賠償請求がなされる可能性がある。さらに、相続共同体の株主としての法的認知でさえ、株主名簿への登録の形式義務を排除するものではない(2012年3月13日付マドリード地方裁判所第1法廷判決第88/2012号)。相続共同体は、自身が出席権を有していた株主総会の無効申請を検討することができるかもしれないが、株主名簿への登録がされていないため、出席が認められていない。
b) 相続共同体が株主の地位で実行することができる行為の種類については、その法的性質を決定することにより、3つの異なる教義的アプローチの議論に入ることなく、回答を得ることができるだろう。その性質はローマ法とゲルマン法の混合体のように思われる。何れにしても、カタルーニャ州民法第552-7条は、通常管理行為又は特別管理行為に応じた、資本会社における相続共同体の合意の採決制度を定めているが、未特定の状況でその区別をどうするかという点が問題となる。この点、2020年6月3日付バルセロナ地方裁判所判決第1016/2020号は、2011年12月1日付カタルーニャ州最高裁判所判決に基づき、本問題を掘り下げている。当該判決において、
「共同体の通常決定又は特別決定の性質は、会社の内部関係を参照して評価されなければならず、共同体の資産要素の全体を変更することのない株式と、資産の処分又は大幅に修正を行うことが予定される株式とを区別して考えなければならない」とされていた。この意味において、地方裁判所の判決は、株主総会における議決権についての決定は常に通常処理行為となるわけではないことを示している。同様に、「共同体が持ちこたえられる金額を超えた共有財産をリスクに晒すような」決定は特別行為とみなしている。したがい、取締役の解任や新規取締役の選任といった経営組織に影響を与えるような決定は単なる管理行為と考えるべきであり、会社機能の変更をするようなものであってはならない。反対に、会社定款の変更を伴うような合意は特別行為とされる。なぜなら、定款変更によって会社の合意の採決に必要な体制と過半数を修正することができ、共同体の当該時点における状況を超えて会社に影響を与えるような組織変更を伴う可能性があるからである。判決は、会社の組織及び機能におけるこれらの変更は会社の通常の機能を妨げる可能性があり、そのためこれらは特別管理行為と理解すべきであると示している。そして特別管理行為は、共同体によって採択された場合には、優越的地位の濫用や違法を理由に異議申し立ての対象となる。
ヴィラ・エドアルド (Eduardo Vilá)
ヴィラ法律事務所
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2021年7月16日