独占的ディストリビューション条項によって、企業はマーケットにおいて支配的立場を占めることができるか

企業が特定のマーケットで地位を高める方法は複数存在し、多様である。例えば、特に自社商品が広く知られている企業や、特定の分野で確固たる地位を築いている企業は、効果的なディストリビューションシステムの導入に多大な努力を注ぐのはよく見られることである。この種の企業は、他の企業に商業的条件を課すことが可能であるため、販売網を構築するにあたって幅広い操作を行う余地がある。しかし、競争にかかるEU法令は、企業が特定の分野において支配的地位を享受している場合に、競合他社をマーケットから追放する目的で不当な商業条件を課すことを禁止している(欧州機能条約第102条)。

以下は、Unilever事件(事件番号C-680/20)について出された2023年1月19日判決を欧州司法裁判所が分析をしたケースである。本件の最も重要な事実は以下のとおりである。

  • イタリア企業Unilever Mkt. Operations Srl社(以下「ユニリーバ」という。)は、150以上のディストリビューターを使用して、イタリアでのアイスクリーム製造及びマーケティングに従事していた。加えて、ユニリーバは当該マーケットにおいて支配的地位を享受していた。
  • ある競合他社からの告発に起因して、市場競争防衛局(以下「ADCM」という)はユニリーバに対して懲戒手続きを開始し、2017年10月31日、改正前欧州機能条約第102条にに定める支配的地位の濫用に基づき、会社に対し60,000,000ユーロを超える金額の課徴金を定めた。
  • ADCMは、ユニリーバが競合他社の成長を妨げる可能性のある排除戦略を実行し、競合他社がその製品のメリットを活かして実際に競争を行うことを妨げていると考えた。具体的には、ユニリーバはディストリビューターに対し、製品の販売拠点の運営者に対して独占条項を課すように指示をしていた。それにより、販売拠点はユニリーバのみを通じてアイスクリームを調達することを余儀なくされた。その見返りとして、販売拠点は割引とコミッションを享受していた。
  • ADCMは、ユニリーバがマーケットでの支配的地位を有する企業であることから、独占条項を用いるという事実のみで支配的地位の濫用を構成するとし、ユニリーバが提出した、その商業実務が競合他社の排除の効果を生じていないという経済分析の評価を行わなかった。
  • ADSMにとって濫用行為が実質的に行われていなかったかどうかは問題ではなく、ユニリーバがそのディストリビューターに対して設けた商業ポリシーにおける高度な干渉により、ユニリーバ及びそのディストリビューターが1つの経済体を形成したと理解すべきとした。
  • ユニリーバは当該決定に対し異議を申し立て、事件はイタリア国務院に持ち込まれ、イタリア国務院は欧州司法裁判所に次の内容の事前審査を求めた。
  • 他企業の経営判断について一定程度の干渉が存在するという事実をもって、これら企業が1つの経済体を構成すると考えるに十分かどうか。それとも、これら企業間に「階層的」な関係が存在することが必要か。
  • 独占条項を通じて行われた支配的地位の濫用の存在を検討するにあたって、国内の競争管理当局は、当該条項が同一マーケットの競合他社を排除する効果を有しているかどうかを検証する義務を有するか。

(i) 第1の質問について、欧州司法裁判所は、支配的地位を有している製造者の商品またはサービスの販売網の一部であるディストリビューターによってなされた行為は、それらが独立して行為を行ったのではなく、当該行為が当該製造者から一方的に決定した経営戦略の一部であることが示される場合には、当該製造者に帰責することができると理解する。したがって、公判中のような事件では、ユニリーバのディストリビューターは、同社のビジネス戦略の道具として行為し、その結果、競合他社排除の効果が生まれたと考えるべきである。結果として、欧州司法裁判所は、支配的地位を有する会社にそのディストリビューターの行為について責任を課すには、「階層的」な関係の存在は必要ないと考える。

(ii) 第2の質問について、欧州司法裁判所は、自身の判例に従えば、当事者がその必要性の全部または大部分を支配的な会社を通じて調達することを約束する条項は、それ自体が支配的地位を有する企業の搾取行為を構成すると認識している。同じことが、支配的地位を有する企業によって付与されるロイヤルティ割引にも当てはまる。

しかしながら、欧州司法裁判所は、この判例による境界線は「Intel vs Comission」事件(事件番号C-413/14号)の判決によって調整されたことを想起する。当該事件において、欧州司法裁判所は、競争のための不利な割引システムに起因する競合他社の排除効果は、当該実務が消費者にもたらす利益によって相殺される可能性があると推定し、したがって、当該実務が正当化される可能性がある。

このように、欧州司法裁判所は、割引実務と独占条項のいずれもが正当化される場合があるため、「Intel vs Comission」事件判決で裁判所が示した論拠は、本事件にも類推適用できるとの見解を示した。言い換えれば、欧州司法裁判所は、独占条項はそれのみでは競合他社の排除効果を生むものではなく、これは各事案の具体的な状況に照らして検討されなければならないとした。

 

 

ルビオ・ジョアン・ルイス (Joan Lluís Rubio)

ヴィラ法律事務所

 

より詳細な情報につきましては下記までご連絡ください。

va@vila.es

 

2023年1月27日

2023-01-30T09:37:04+00:0027/01/2023|EU規則, ディストリビューション, 契約|

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