2016年検事局通達第1号の予備分析において最も強調されたポイントの一つは、コンプライアンス・プログラムがどのようにあるべきかに関する検事局の立場についての説明である。以下に、検事局通達のコメントのうち興味深いと思われるものを述べる。

1.倫理規定を制定する必要

検事局通達によると、コンプライアンス・プログラムは、その本質において、表面的または他のプログラムと同じ(汎用型)であってはならないとしている。また、検事局通達は、単に刑事責任を免れるためだけにコンプライアンス・プログラムを作成するのではなく、企業の経営者の法令遵守に向けた確固たる決意が存在しなければならず、当該決意が企業内に浸透していかなければならないとしている。

2.外部委託の可能性

コンプライアンス・オフィサーが法人内にいなければならないことは明確に言及されている。検事局が、組織内でどのように意思決定がされるのかを知らない外部の者がコンプライアンス・オフィサーに就任することを容認するとは考え難いため、このことは想定の範囲内である。もっとも、検事局通達は、一定の企業においては、コンプライアンス・オフィサーの特定の作業を外部委託することができるとしている。例えば、規制業種における関連法令改正への対応などである。

3.コンプライアンス・プログラムがすべての犯罪行為を予防することは不可能であること

検事局通達は犯罪予防の重要性を述べるとともに、コンプライアンス・プログラムは当該企業内で起こり得るすべての犯罪行為を予防できるものではないとも述べている。したがい、ある犯罪行為がされたからといって、コンプライアンス・プログラムの有効性が否定されるものではない。この見解は、スペインの規則が参照した海外のシステム(米国FCPAガイドライン等)に倣ったものである。

4.情報プログラムの利用の必要性

コンプライアンス・プログラムが満たさなければならない形式的要件と検事局通達によって示された要件(例えば、コンプライアンス・プログラムは書面で作成されなければならない等)のうち、もっとも興味深いのは、コンプライアンス・プログラムは情報プログラムによって処理されるという点だろう。しかし、この要件は会社の規模に応じて異なるものと理解する。

まとめ

検事局通達を読むと、企業が導入するコンプライアンス・プログラムは刑事のみの性質を有するものであってはならないし、法令遵守と犯罪防止を単に半分ずつ定めるようなものを意味しているのでもないとの印象を受ける。つまり、企業は、犯罪行為予防のみに照準を絞り、それに留まるようなコンプライアンス・プログラムとすることはできない。また、コンプライアンス態勢を検討する際には、会社の規模やコンプライアンス・オフィサーの役職を外部委託することができない点も考慮しなければならない。

 

ヴィラ法律事務所

 

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2016年3月24日

 

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