スペインにおけるトラストサービスプロバイダー(Trust service provider )への規制を定めた2020年11月11日付スペイン法律第6/2020号は、「域内市場における電子取引のための電子識別子およびトラストサービスに関する」2014年7月23日付欧州議会及び欧州理事会EU規則 第910/2014号(2016年7月1日から適用)を、後者の調和不足箇所、及び加盟国の裁量に委ねられている側面を補完するものである。

EU加盟国で直接適用されるEU規則第910/2014号では、 (i)電子認証と(ii) 電子トラストサービスプロバイダーについての規制を定めた。

(i) 電子認証の分野では、同規則は、オンライン公共サービスへのアクセスについて、加盟国が欧州委員会に届け出た国の電子認証方式を相互に承認することを定めた。当該措置は、電子的手段による行政機関との安全なやりとりや、国境を越えた手続きへの利用を促進することを目的としている。

(ii) 電子信託サービス(電子署名のほか、法人の電子印鑑、署名・印鑑の適格性検証サービス、電子署名・印鑑保存サービス、認定タイムスタンプサービス、電子交付サービス、ウェブ認証証明書発行サービスなどが含まれる)について同規則では、認定されたトラストサービスプロバイダーを利用し作成、通信された電子文書には、適格性の欠如したサービスと比較し、そのような電子信託サービスでサポートされている高度な監督・セキュリティ要件が課されていることにより、独自の証拠能力を有するとしている。

これに関連して、電子文書の法的効果に関するスペイン法律第6/2020号の第3条は、以下のように定めている。

  1. 公的、私的、及び行政電子文書は、それらに適用される法律に則り、それぞれの性質に対応する法的価値・有効性を有する。
  1. 私的電子文書の証拠能力は、認定されたトラストサービスプロバイダーが利用されたか、非認定トラストサービスが使用されたかにより異なるとした。

認定トラストサービス使用の場合:

有効性を問われるような場合、リストに掲載される認定トラストサービスプロバイダーを利用した電子文書は、トラストサービスが適切に提供され、証拠能力としての特性を満たしていると推定されるものとする。にもかかわらず電子文書の証拠能力に異議が申し立てられた場合、検証責任は異議申立ての当事者が負うものとする。当該検証が否定的な結果に終わった場合、検証から生じる費用、経費および手数料は、異議申立て者が負担する。また、裁判所の見解では、異議申立てが過失であった場合、300ユーロから1200ユーロの範囲で罰金を課すことができるとした(民事訴訟法に関する2000年1月7日付スペイン法律第1/2000号の第326条4項がスペイン法律第6/2020号最終第2規定により追加された)。

– 非認定トラストサービス使用の場合:該当電子文書の有効性に関心を持つ当事者が、電子文書の真正性、完全性、日時の正確性、その他の特性につき証明を求めたり、争われた場合、電子文書を提供した当事者は、専門家による筆跡の比較を要求したり、そのような効果に有用で関連性のあるその他の証明手段を提案することができる(民事訴訟法に関する2000年1月7日付スペイン法律第1/2000号の第326条3項がスペイン法律第6/2020号最終第2規定により修正された。)

前述の法律の対象となる認定トラストサービスプロバイダーに関する情報と、そのプロバイダーが提供する認定トラストサービスに関連する情報を含むリストの確立、維持、公示に責任を持つスペインにおける組織は、経済・デジタル変革省とされる。

 

 

ビジャビセンシオ・カルラ (Carla Villavicencio)

ヴィラ法律事務所

 

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2021年7月30日