インターネット上のサービスや商品の仲介役であるプラットフォーム上で、登録商標の不適切な使用があった場合における運営者の責任は?

電子商取引に関する欧州指令第2000/31号によれば、データのハウジングやホスティングサービスについては潜在的に責任が免除されるとみなすべきとしている。消費者であれ企業であれ、供給を提供し要求を受領するという第三者同士の間のeコマース・プラットフォームの提供業者は、この種のサービス提供業に分類される。これらはまさに、需要と供給が集合した買主・売主間でのクローズド・オペレーションがされる証券取引所である。本プラットフォームは、純粋な仲介者として受動的に機能、または独自の製品を提供することも可能だが、製品の販売者に対するロジスティックス、製品管理及び買主への配送のサービスを提供する等で、製品の販売過程での共同作業にその役割を限定することもできる。後者、後者の協力関係で、プラットフォームが配送過程にて行動する場合、単なる保管にとどまらず、買主への商品引き渡し段階までを含めた積極的な介入であると言及することができよう。

欧州司法裁判所判決第324/09号(L’Oreal-E-bayに代表されるケース)は、プラットフォームが商標の違法な使用を察知しながら、その使用を防止・阻止するための必要な措置を講じない場合には、結果として、プラットフォーム運営者は商標権者に対して直接責任を負うこととなるとし、eコマース・プラットフォームの責任範囲を形成した。上述の判決文において、商標の違法使用が推測可能、又は、商標権者から十分に根拠のある方法で商標の違法使用を通知された場合には、プラットフォーム運営者は当該状況を認識していたと理解すべきであると、欧州司法裁判所は宣言している。

しかしながら、同裁判所は、2020年4月2日付判決(事件番号C-567「Coty-Amazon事件」)では、第三者によって製品が販売され、プラットフォームは製品の保管場所として機能する場合において、責任区分につき詳述した。

本事件の前提事実は以下のとおりである。

ある個人業者個人業者が「Davidoff」という名称の香水を販売するために、Amazon.de内のAmazon Marketplaceを利用し、また、Amazonのロジスティックサービス(Logística Amazonプログラムによる製品の保管)の契約も結んでいた。しかしながら、買主への商品発送は第三者が行なっていた。ここで重要なのは、販売商品の商標権が消尽していなかった、つまり、当該商品が商標権者自身によって、又は商標権者の承認を得て、マーケットに出品されていたことである。また、本件においてAmazonは売主としてではなく売主と買主との間の仲介役として機能していたことも留意するべきであろう。

Coty社は、Amazonのプラットフォームで売主がオファーをしていたDavidoff商標が付された香水をテスト購入した。まず、Coty社は売主に対し、自身が保有している商標権は消尽しておらず、したがって、当該商品の販売差止めを行う権利を有することを理由に、販売者に対し販売停止を要求した。当該要請は成功裏に終わった。加えて、Amazonは、別の売主から取得した別途30本の香水をCoty社に引き渡したが、当該売主の情報については開示を拒否した。

Coty社は、Amazon Service Europe及びAmazon FC Graben(ロジスティックス・サービス会社)を相手取り、ドイツ商流におけるDavidoff Hot Water香水の所持又は発送を中止させることを目的に、ドイツの地方裁判所に訴えを提起した。上記訴えは第一審及び控訴審では、以下を理由に却下された。

(1) Amazon Service Europeは、当該商品の保管・発送を行っていない。

(2) Amazon FC Grabenは、当該売主やその他の売主からの委託を受けて、当該商品の保管を行っていた。

言い換えると、被告は積極的に商流化に介入しておらず、したがって、商標権の侵害者と宣言することはできなかったと理解されたということである。ドイツ連邦裁判所は、控訴審(判決の見直し)において、この種の取引におけるプラットフォーム業者の責任区分を明確にするために、欧州司法裁判所に対して予備判決を付託した。つまり、商標権の侵害を行なっている第三者のために商品の保管を行う(当該商標権の侵害については認識をしていない)者が、商品のオファーは第三者である売主が行うものの、その販売及び商流化を目的として当該商品を保有することを根拠とする場合、プラットフォームの責任の有無の判断を委ねたのである。

本判決は欧州規則207/2009号第9.2条b)及び欧州規則第2017/1001号第9.3条b)の解釈方法を中心に展開された。具体的には、記載された販売を目的とした保管・管理業務が、同規則の条文に照らして、商標の「使用」とみなすことができるか、についての判断である。

裁判所は、「使用」という文言は、積極的な行動と、使用を構成する行為の直接又は間接的な支配の両方を意味するものであることに言及した。この意味において、商標権者は商標の積極的使用行為の差止めを請求する権利を有する(Daimer事件、事件番号C-179/15号やC-129/17号)が、当該権利は、使用を中止、つまり禁止事項を遵守する能力を有する者に対してのみ行使することができる(事件番号C-179/15号)。同様に、eコマースプラットフォームの発展につき、欧州司法裁判所は、商標を利用した商品を販売するためにプラットフォームを利用するのは、プラットフォーム自身ではなく、当該商品の売主である、と述べている。必ずしも預託者(プラットフォーム)が他者の商標を使用しているとみなす必要はないが、預託者に商品を持ち込み、引き渡した者は、商標を使用していると見なすべきである。(事件C-379/14号)。

登録商標と同一または類似した商標の製品の預託が、そのような商標の「使用」と認定されるためには、預託を受けた経済事業者が、商品の提供や商流化を目的として追求するという状況が必要である。言い換えれば、市場において商品販売又はマーケティングに積極的に参加しているかが判断材料となる。

上述のケースにおいて、欧州司法裁判所は、被告自身が商品の販売や商流化を行なっておらず、したがってDavidoff商標の使用を行なったと理解することはできない、と結論づけた。しかし当該結論は、プラットフォームが、保有する香水に関する標識や商標を、それらの販売者のためではなく、自らのために使用していると考える可能性を損なうものではなく、もしくは、販売者が特定できない場合には、商品はプラットフォーム自身によって提供または販売されているとみなすことができることに特に注釈している。判決において明示的にされていないが、本注釈に関して言えば、プラットフォームが売主を特定しない場合には、(侵害行為について認識がありながら適切な措置を講じなかったことで)プラットフォームが商標を「使用」している、その結果として、プラットフォームが当該商標権の侵害についての共同責任を有するとの解釈に達することができよう。

欧州司法裁判所は、上述の2つのEU規則の条文については、商標権の侵害をしている商品を、当該侵害の事実の認識なく、第三者に代わって保管している者については、当該保管者自身が販売又は商流化の目的を追求していない場合には、これらの条文の意味において、当該商品について販売又は商流化の目的で保管しているのではないと解釈すべきと結論づけた。

 

 

ヴィラ・エドアルド (Eduardo Vilá)

ヴィラ法律事務所

 

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2021年3月19日