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欧州グリーンディールの遵守のために、EU加盟国およびスペインの法規制に従い、特定の企業には、主に環境および社会的な性質を有す非財務情報を提供することが義務付けられている。

非財務情報の開示に関するEU指令第2014/95号(“Non-Financial Reporting Directive”「非財務報告指令」または“NFRD” として知られる)の承認を受け、スペインでは、2018年12月28日付法律第11/2018号が可決され、非財務情報と多様性に関する以下の3法律が改正された:

・商法

・資本会社法

・会計監査法

法律第11/2018号は、EU非財務報告指令のスペイン法への置換のほか、対象企業の適用範囲を拡大し、非財務情報報告書(“Non-Financial Information Statement” または、“EINF” として知られる)への記載内容の詳細および、独立した検証サービス提供者による非財務情報報告書の検証義務を定めた。

上述の情報提供義務を負う企業が従うべき規制をより現代化かつ強化するため、及び、欧州委員会が検出した非財務報告指令の有効性の欠陥が検出されたことにより、企業による持続可能性に関する非財務情報の提示に関しNFRD指令に代わって2022年12月14日付第2022/2464号EU指令(Corporate Sustainability Reporting Directive「企業持続可能性報告指令」または“CSRD”」として知られる)が承認された。

2023年1月5日に発効した企業持続可能性報告指令の主な新規定は、以下の通りとなる。

– 上場、非上場にかかわらずすべての「大企業」グループ、ならびに(零細企業を除く)上場中小企業に対象を拡大

– 持続可能性報告書の内容、その作成基準、検証要件

– 「非財務報告」から「持続可能性報告」という用語への置換え

企業持続可能性報告指令第5条に従い、EU加盟国は2024年7月6日(「本件置換日」)までに当該EU指令を国内法に置き換えることが義務付けられる。スペインでは、経済・デジタル変革省(以下「本省」)の要請を受けた会計検査院(ICAC)は、2023年5月5日に、環境・社会・ガバナンスに関する企業情報市場を規制する予備草案(以下「本件草案」)を提出し、これにより、商法、資本会社法、会計監査法を改正することが提案された。

本件草案の目的は、持続可能性情報報告に適用される法体系の確立、当該報告書の検証方法にルールを定めることにある。当該草案では、(企業持続可能性報告指令と同様の観点から)持続可能性に関する報告書を発行することで、情報適用義務を有す対象企業を以下のように定めている。

1) 「大企業」: 直近の連続する2期連続会計年度決算日のそれぞれにおいて、以下の3基準のうち少なくとも2つを満たす企業のことを指す。

(i) 総資産が20,000,000ユーロ超である。

(ii)年間純売上高が40,000,000ユーロ超である。

(iii) 会計年度中の平均従業員数が250名を超える。

2) 上場中小企業(零細企業は除く)

3) スペインに設立された子会社で、最終的な親会社が第三国の法律に準拠する法人である場合は、以下のいずれかの要件が適用される。

(i) 上記1)の基準により「大企業」とみなされる子会社、または上記(2)の要件を満たす中小企業

(ii) 最終的な親会社の年間売上高が、直近の連続する2会計年度のそれぞれにおいて、EU域内で1億5,000万ユーロを超である。

4) 第三国法人によってスペインに開設された支店で、他の第三国法人に属していない、またはグループの一部を形成していない場合:

(i) 支店の前会計年度の年間売上高が40,000,000ユーロ超である。

(ii) 支店を設立した第三国法人が、スペイン国内に子会社を有さない。

(iii) 当該第三国法人の年間売上高が、直近の連続する2会計年度のそれぞれにおいて、EU域内で1億5,000万ユーロ超である。

5) EU規則第575/2013号に定める、信用機関、保険・再保険会社(ただし、大企業または上場中小企業(零細企業を除く)に該当する。

さらに本件草案は、持続可能性報告書提出の義務対象の企業に、追加情報の報告を求める2020年6月18日付持続可能な投資を促進するための枠組み構築に関するEU規則第2020/852号の規定を考慮している。

上記を鑑みると、スペインにおいては、現在のところ、本件草案の提出により本省が意図する法律の可決過程にあり、企業持続可能性報告指令の本件置換日までに、国内法化を進めていることが確認できる。

持続可能性報告書の初回提出は、本件草案の第6最終規定に定められた方法で段階的に公表される。従って、法に定める対象会社は、年1回、年次決算の承認・提出の際に、全取締役が正式に署名した持続可能性報告書(経営報告書に含まれなければならない)を提出しなければならない。

対象企業に企業持続可能性報告指令が適用開始されるまでは、非財務報告指令(スペイン国内レベルでは2018年法律第11/2018号)が引き続き適用されることにも、言及しておこう。

 

スニガ・アルベル (Albert Zúñiga)

ヴィラ法律事務所

 

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va@vila.es

 

2023年10月20日