1. 導入:

2015年10月22日付官報において、2015年9月30日付の法務省登記・公証局長官決定が公示された。当該決定は、セウタの商業登記及び不動産登記官の判断に対する異議申立て手続きにおいてなされたものであり、互選により選任された取締役の登記申請を却下する旨を示した。

当該互選による取締役の選任は、取締役会設置合同会社(Sociedad Responsabilidad Limitada、以下「S.L.」)の取締役一名の辞任に伴い、株主総会で後任取締役の選任が追認されるまでの間、後任として株主から一名を選任するものだった。しかしながら登記官は、資本会社法(「LSC」)第244条は互選による取締役の選任は株式会社(Sociedad Anónima、以下「S.A.」)にのみ許容するものであることが明らかであり、S.L.では認められていないとして、当該取締役就任登記申請を却下した。

2. 会社からの異議申立て

上記の登記官の登記申請却下に対し、会社から異議申立てがなされた。当該異議申立てでは、

(i) LSC第244条はS.L.の取締役会の互選手続きを禁じているのではなく、S.A.における手続きを定めているに過ぎないこと、

(ii) LSC第245条も同じくS.L.における互選による選任を禁じているものではないこと、

(iii) この前提に立つと「取締役が欠けた場合は、その後に開催される初回の株主総会までの間、取締役会は株主の中から欠員を補充することができる」とする会社の定款第21条の枠組み内で理解されるべきであること等が主張された。

この異議申立てを受けて、管轄登記所の登記官から登記・公証統局宛に本件に関する検証依頼がなされた。

3. 登記・公証統局の決定

登記・公証統局は、本件において検討されるべき唯一の問題は、合同会社の取締役会の一員が辞任したことに伴い、取締役会自身が株主の中から互選によって新たに取締役を選任することの可否であるとした。また、定款や会社組織に関する規定は、その後、拘束力をもつような法改正による影響を受けないような場合に限り、当該規定により導かれるところに従うべきであるとした。

本件について、現行の資本会社法第214条及び2010年7月2日付勅令法第1号は、一般規定として、取締役選任の権限は、法にその他の規定がない限り、株主総会が有するとしていること、そして法の定める唯一の例外は、S.A.のみを念頭に置いておりS.L.についての例外は考慮されていないとした。このことから、LSC第244条の「株式会社において、任期中に代理の取締役を立てないまま取締役が欠けた場合、その後に開催される初回の株主総会までの間、取締役会は株主の中から欠員を補充することができる。」の文言は、合同会社に対して取締役を互選で選任することを許容しているとは言い難く、当該規定は株式会社のみを念頭に置いているものであると結論付けた。結果として、本件異議申立ては却下された。

4結論

取締役会を設置する合同会社における取締役会に欠員が生じた場合の対処法は、臨時株主総会を開催する以外ないことが確認された。しかしながら、合同会社の中には、株主の数が多く、株主総会の開催が容易ではないケースもあるため、取締役会に欠員が生じないように対策を検討しておく必要がある。

 

 

Mika Otomo

ヴィラ法律事務所

 

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2015年11月6日