2017年1月10日、国際裁判管轄に関する最高裁判所判決が出された。この判決により、アリカンテ州高等裁判所(同裁判所はEUの商標裁判所としての管轄権を有している)がBayerische Motoren Werke AG(以下「BMW」)に対して国際裁判管轄権のフォーラムショッピング、つまり、裁判管轄の恣意的な選択について出した判決が追認されることとなった。

事の起こりは、アリカンテ地方裁判所商事法廷に対して、同裁判所を欧州デザイン及び意匠裁判所として、BMWが、イタリアに本社を置くEU随一のホイールメーカーであるACACIAに対して起こした裁判にある。この申立ては、共同被告人としてAUTOHAUSという、ACACIAと資本関係も直接の取引関係もない、しかしACACIAの製品を販売している、スペインの自動車整備工場にもなされた。

申立てにおいてBMWは、ACACIA社のある工業デザインを用いたホイールの提供、商品化及び販売促進が、BMW社の登録済み工業デザインを侵害していることの確認と、共同被告2社がEU内において問題となっているホイールについてのあらゆる商事行為を中止し、現在手元にあるホイールについてはすべて廃棄することを求めた。

BMWはAUTOHAUSの登記住所がスペインにあること及び被告両者間の密接な関係にあり、両者を共同被告とした申立てを行うことは問題を個別の訴訟で取り扱うよりも速やかな解決に結びつくことを理由に、2001年規則第44号第6条第1項の定める関連性に基づく管轄としてスペインに国際裁判管轄があるとした。

イタリア企業ACACIAは、BMWの一連の行動は一種のフォーラムショッピングであり、スペインの裁判所には管轄権はないため、申立ては却下されるべきとの抗弁を行った。この際ACACIAはAUTOHAUSにホイールを卸売したこと、またその製品がBMWのEU登録デザインに類似していることは否定しなかった。加えて、ACACIA社はその抗弁において、2002年欧州規則第6号デザイン及び意匠に関する規則の第110条の「マストマッチまたは修理」条項によれば、本件における製品(自動車のホイール)は、完成品の一部を構成している要素に過ぎず、もしその使用が完成品を元の外観に戻すための修理を目的としているならば、EUの意匠制度には抵触しないと反論した。

アリカンテ地方裁判所商事法廷は、自動車のホイールにはマストマッチまたは修理条項は適用されないと判断したアリカンテ州高裁の一連の考えが存在することから、BMWの訴えを認めた。ACACIA社は控訴し、その控訴理由において、ブリュッセルI規則(現在のブリュッセルI bis規則)第6条第1項の適用が正しくされておらず、裁判管轄を欠いていた点に関する疑問を呈した。

結論として、アリカンテ州高裁は、上述の条項は、共同被告人の一人が本店を有する国の裁判所の管轄に属させないことを唯一の目的として複数の被告人に対して訴訟の申立てを行うことを原告に許すような方法で適用されることはできず、事実と法とで一致しないとして、アリカンテ地方裁判所商事法廷の国際裁判管轄にかかる決定を覆した。これに対しBMWは、共同被告2社による侵害行為は同一のものであり、上述の第6条第1項にある関連性にかかる要件を満たしていると異議を唱えた。

しかしながらアリカンテ州高裁は、BMWはこれまで、アリカンテ州裁判所において、ホイールについてはマストマッチまたは修理条項の適用例外とはならないという、自社の利益となるような決定をいくつも獲得していることを指摘した。他方、ACACIAの本店所在地であるイタリアでは、BMWは、上記とは真逆の判決を受けていた。

これらの状況を踏まえ、アリカンテ州高等裁判所は、BMWは、都合の悪い法的解釈を避けるためにEUを代表する交換用タイヤメーカーであるACACIAの本店所在地のあるイタリアでの裁判を恣意的に避け、イタリアにおいて蓄積していたACACIA社に対する訴訟を、その修理工場のみが存在するスペインでおこしたと考えた。

これら二つの理由に基づき、アリカンテ州高等裁判所は、BMWが自分たちに都合の良い法的解釈を行う裁判所を探す、いわゆるフォーラムショピングを行ったと結論付けた。

最高裁判所はその判決において、原告側が国際裁判管轄における多数の規範および自身の利益を考慮した上で裁判所を選択することは、法律において適法とみなされるため、それだけでは一概にはフォーラムショッピングとみなすことはできないとした。しかしながら、本件においては、自身において有利な法的解釈をもとめ、被告ともっとも関連性の少ない国の裁判所で訴訟を起こしたため、フォーラムショッピングとみなすことができると結論付けた。

この訴訟戦略は、被告の所在地の裁判所という裁判管轄の原則に反すること、またブリュッセルI規則第6条第1項に定められる例外的な管轄のみならず、欧州規則に規定される国際裁判管轄制度が求める管轄の予測要請にも反するものだろう。

 

 

エステル・ウゴ (Hugo Ester)

ヴィラ法律事務所

 

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2017年2月3日