1. 導入: 国際商工会議所(ICC)規則の新しい略式仲裁手続き

2017年3月1日、2012年に導入された商事紛争仲裁に関するEU規則の改正規約が施行され、2017年3月1日以降に締結されるすべての仲裁合意に直接適用されることとなった非常に迅速な手続きによる今回の改正において最も注目すべきものは、ICC規則第30条(「略式手続の規則」)の附属書VIに規定されている200万米ドルを超えない紛争解決のための略式手続きの導入である。

2. 適用範囲

ICC仲裁規則第30条によれば、EU加盟国がICC仲裁に提出した仲裁申立てが2017年3月1日以降に締結された合意による場合には、仲裁当事者が明示的にその適用を除外しない限り、あるいは仲裁当事者の一方がICC憲法を前に適用除外請求をするか、ICC仲裁裁判所が案件を取り巻く状況を鑑みた上で適用不適切と職権において判断した場合を除いて、当該略式手続きは自動的に適用される(オプトアウト条項)。

また、紛争の金額にかかわらず時間と金銭的負担を節約するために略式手続きによる紛争解決を希望する者は、申立て時にこの解決法を明示的に選定することで、略式手続きを適用することができる旨を仲裁合意内に定めておけば、略式手続きを利用することができる(オプトイン条項)。

3. 特徴

略式手続の最も特徴的な機能は、仲裁廷の構成と手続きのタイミングである。

  • 仲裁廷の構成に関しては、仲裁合意において異なった人数(例えば3人)の仲裁人が選任される旨が定められていたとしても、ICC仲裁法廷は、仲裁人一名しか選任することができず、結果として、当事者の意思に反することとなることは、念頭に置かなければならないだろう。

また、略式仲裁規則第3条により:

  •  ICC規則第23条に規定される付託事項書(Terms of Reference)(当該文書には、当事者の主張と問題点の要約が記載される)の作成は省略される。
  • 審問手続きの期日は、申立て書類が仲裁裁判所に提出された日から15日以内に設定される。
  • 仲裁廷は、当事者とあらかじめ協議をしたうえで、提出する文書に制限を設けることができる。
  • 仲裁廷は、当事者とあらかじめ協議をしたうえで、証人尋問や専門家による検証を実施せずに、書面のみに基づいて紛争解決をすることができる。
  • 口頭弁論を実施する場合、仲裁廷はビデオ会議、電話会議、その他同様の方法を用いることができ る。
  • 最後に、仲裁廷(おそらく、仲裁人一人で構成される)が最終決定を出すための期間は、通常の仲裁廷と同じ、6ヶ月が維持された。ただし、6ヶ月の起算は、付託事項書に署名がされた時点ではなく、審問手続きの期日からとされた(付託事項書の作成がされないため)。

4.結論

新しい略式仲裁手続きは、手続きを簡略化することにより仲裁合意に達するための費用を減額するために導入された。ICC裁判所所長Alexis Mourreの声明によれば、「紛争は 迅速かつ有益な方法で解決すべきである」ということである。

 

 

ヴィシャビセンシオ・カルラ (Carla Villavicencio)

ヴィラ法律事務所

 

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2017年4月28日