スペイン政府は調停の促進法の法案を最近公示した。

将来の規定はいくつかの法を改正するものであり、その目的は、特定の紛争について、初期の解決手段として訴訟手続きの枠外で紛争を解決する手段としての調停制度の対象となるような体制を整え、裁判所の負担や過剰な負担を軽減することである。

この新制度は、現行の自主性によるのではなく、紛争当事者に対して調停での解決を義務付けるものである。法案では「軽減された強制」と呼ばれ、強制力を隠すために遠回しの表現がされている。なぜなら、調停は訴訟手続きへアクセスするための必要な手続き費用となるためだ。

予定されている法案では、法第5/2012号民事及び商事事件の調停に関する法が改正される。調停の期間が延長され、30自然日とされる。訴訟手続き過程を開始する前に両当事者間に調停による解決を義務付ける商事案件は、以下となる。

(a) ディストリビューション契約

(b) 代理店契約

(c) フランチャイズ契約

(d) 商品及びサービスの供給契約

しかしながら、これらは「個別交渉の対象である場合に限る」との条件を定めている。

「個別の交渉」として解釈されるべきものが何であるかの規定がなく、当該言及の不明確さには驚かされる。最終的に法案が可決された場合、最終版の条文においては、この点が明確に規定されていると信じたい。

法案では、「調停が試みられた」とみなされるためには、裁判所への訴え提起前の6か月の間に、まず調停人の前で情報交換セッションを実施し、次に解決を模索するセッション(同日開催も可能)がされなければならないとしている。当事者は個人的にセッションに出席しなければならず、当事者が法人の場合は、法定代理人又は代理権限を持つ者が出席しなければならない。

調停人は、法務省又は自治体管轄の場合には自治体の、調停人及び調停機関の登録簿に登録されていなければならない。

当事者のいずれかが合理的な理由なく情報交換セッションを欠席した場合、申請された調停を放棄したものとみなされる。

この法案は、よく考えられてはいるものの、驚くべき無邪気なミスを犯している。第一に、法案作成者が経験と商事実務の見地に足りていないことが明らかである。個人間に生じた小規模な商事事件や、国際企業間、大規模又は中規模企業間の紛争を取り扱うことができない。また、当事者間での友好的な解決に至る道が途絶え、当事者双方が訴訟手続きに訴える場合(すなわち、第三者に当事者間の見解の相違を解決してもらうことを決めた場合)、当事者の意思により解決することができなかったことが第三者(特に資格のある調停人でなければ)によっても達成されないことは明らかである。したがって、少なくとも、この規則は、当事者が裁判所に訴え提起を行う前段階として調停手続きを行わなければならないための金額の範囲を定めなければならないと思われる。

また、この法案は訴訟手続き中の調停についても規定する。つまり、裁判に先立ち調停が行われなかった場合で、裁判官が調停での解決が可能と考える場合、あらゆる民事及び商事事件の裁判の最中に調停が行われることを可能とする規定である。原告及び被告が申請しない限り、調停によって訴訟手続きが中断することはない。裁判官は民事及び商事事件の調停に関する法令の定める手続きに則り、調停人を指名する。

裁判外手続きによる紛争解決の制度は、特に商事事件については、あくまで当事者の自主的な意思による代替手段であり、そうあるべきだと考える。それを義務付けることは調停の性質に反するものである。訴え提起前に、問題となっている事案についての能力及び理解を備えているか疑わしく、かつ、調停が自主的なものである場合に当事者の信用を預けていない第三者に対して主張を提出する義務を当事者に課すことで、当事者の訴訟手続きを利用する権利が損なわれる。他方、相当な金額又は性質の紛争の多くにおいて、調停人は当事者がそれまでに試した解決方法よりも優れた解決策を提案することはできないことは明らかである。加えて、調停人が、裁判官や弁護士よりも当該事件を評価し判断をする能力に長けていると期待するのは、特に案件が複雑である場合には、合理的ではない。

訴訟手続き又は調停人による介入のいずれが当事者間の紛争解決手段として適切であるかは、マーケットで活動する代理店同士の関係を通常規定する常識や実用主義に基づき定まるものである。

義務的な調停は多くのケースにおいて、最終的な判断を得る手続きに、長くうんざりとする遅れを生じさせるものと思われる。この遅れは、その後の回復が難しいだろう損害を生じる可能性があり、また、望む望まないは関係なく、訴訟手続きが始まる前に当事者間に紛争があること及びその主張内容が明らかになってしまう。政府により提案がされた方法は私人間における紛争でそれほど高額に及ばないケースであれば一定の合理性がある。しかし、商事事件全般に調停を義務付けることは、司法行政に死することはなく、費用と複雑さを生じさせることになるだろう。最終的に、訴訟件数の減少や利用可能な保証の強化を予測できる合理性があるかどうか見直す必要があるだろう。ただ単に当てはまらないと考えるだけではなく、さらなる遅れと究極的には訴訟手続きを利用する基本的な権利の制限という障害としてマーケットに受け止められる可能性がある抑止手段となり得ると考える。

 

 

ヴィラ・エドアルド (Eduardo Vilá)

ヴィラ法律事務所

 

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2019年1月25日