本稿では、スペインに恒久的施設(PE)や支店を有さない外国法人が、スペインにて不動産資産を取得できるかについて検討する。

当該問題は、EU加盟国内法人が、増資手続により資本金としてスペイン領土内に位置する不動産を拠出した際に、ある不動産登記官が不動産登記簿登記を拒否した件に発端する。

本件は、増資時にスペイン国内に位置する不動産を現物出資したハンガリー法人を取り扱っている。同法人は、公証人認証、アポスティーユ認証を取得後、スペイン語に公正翻訳済みの株主総会議事録証明書、及びブダペストの裁判所の商業登記簿から取得した登記履歴事項証明書に、公証人認証、アポスティーユ認証を取得後、スペイン語に公正翻訳済をした書類をもって、当該株主総会決議を公正証書化した。

エスコリアル(マドリッド)不動産登記所の登記官は、ハンガリー法人は恒久的な代理人として行為を行えるスペイン支店を設置していないとの理由で、スペイン商業登記規則第295条以下の条文および商法第22条第2項を引用して、増資にかかる決議の登記を拒否した。

当該登記拒否決定には、本件ハンガリー法人及び本件増資にかかる公正証書作成に係った公証人が異議を申し立てた。そして、2023年3月22日付法的安全・公文書管理局(以下「公文書管理局」という。)の決定にて、具体的な紛争点は、異議申立人らに有利に解決されるとともに、本件にて提起された実質的問題についても判断を示している。

公文書管理局は最初に、民法第9条第11項に従い、本件外国法人は法的能力を有すると認識した。他方で、2015年7月30日付法律第29/2015号第58条には、登記手続き、その法的要件および登記事項の効力はスペイン法に準拠すると定められていることに言及した。同様に、不動産ローン規制第51条は、法人登記の場合、 クラス、商号、税務識別番号、対応する登記簿への登記、国籍(外国法人の場合)および本店所在地を記載すること; 外国法人の場合は、法人が設立または登記されている国の商業登記所または商務登録所に言及することを規定することも確認した。

続いて商業登記所規則第5条を想起し、登記法人が有効に存続していること、及び、法人代表者の地位の期限と権限の充足性は、登記事項証明書が公証人認証、アポスティーユ認証が付与されていることにより認定することができると述べた。

最後に、2017年6月14日付EU指令第2017/1132号第14条は、資本会社の関連文書及び細目の電子謄写を公告しなければならないと規定することに触れた。そして、登記簿連携システムに公告された当該文書及び細目は、加盟国に対し、定型フォーマットの電磁的方式で利用できるようにする義務も言及した。これらには、本件のような定款変更も含まれていた。

前述の全て、および公証人規則第155条、第165条を適用し、公文書管理局は、不動産登記官の決定を覆し、外国法人がスペイン公証人の面前出頭する際、「必ずしもスペインにある支店またはPEの代表者であることを明示する必要はない」と、実際その代表者を通じて行なわれる行為を損なうことなく結論づけた。外国法人および代表者には、設立国籍の法律に従って存在することの証明と、呼応する税務識別番号の明示のみが求められる。同様に、外国法人がスペイン公証人に面前出頭し、特にスペイン領土内に所在する不動産の直接または間接的な取得に関わる契約を公証するためには、法律において明示される例外的ケースを除き、スペインにてPEの存在が必要なわけではない、とした。

 

 

ヴィラ・エドアルド (Eduardo Vilá)

ヴィラ法律事務所

 

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2023年5月5日