「ゴールデンビザ」という名で知られるスペインの投資家用居住許可の申請・取得は、近年、スペインへの移住を希望する高い購買力有する外国人に広く利用されているメカニズムである。

ポルトガル、マルタ、ブルガリア、ラトビア等の他のヨーロッパ諸国に追随し、スペインは外国資本と人材の誘致、ビジネス環境の強化を目的に、起業家支援とその国際化に関する2013年9月27日付法律第14/2013号を施行し、投資家への居住許可付与制度を導入した。当該許可証は、その保持者にスペイン領土内での居住と労働を認める。そして投資家の配偶者やこれに準ずる正式なパートナー関係を有す者、18歳未満の子供、18歳以上だが被扶養者である子供、又は投資家が扶養する親にも同様の権利を与える。

当該許可証の取得には、申請者が非EU国籍者(二重国籍者で、一方の国籍がEU加盟国である場合は除く、この場合、2007年2月16日付勅令法第240/2007号に定めるEU市民居住許可制度が適用される)で、以下の要件を満たす必要がある。

– スペインに不法滞在をしていないこと

– 18歳以上であること

– スペイン及び過去5年間の居住国において犯罪歴がないこと

– 自由渡航に関しスペインと協定を締結する国の領域で、入国拒否人物としてリストアップされていないこと

– スペインにおいて、自己負担なき医療保険に加入していること

– 本人、家族のために十分な経済力を有すこと。現在申請者は年間IPREM(El Indicador Público de Renta de Efectos Múltiples :公的所得指標)の400%に相当する金額、すなわち約28,000ユーロ、及び家族として申請する者それぞれに追加として年間IMPREMの100%(約7,000ユーロ)相当の経済証明をすることが求められている。

加えて、申請者は個人名にて、もしくは申請者が実質的に保有する法人を通じて、スペインで以下のいずれかの投資を実行する必要がある。

(i) スペイン国債200万ユーロ以上の購入、株式・出資持分、投資ファンド、もしくは銀行預金として100万ユーロ相当以上の投資

(ii)新規公益事業プロジェクトへの投資

(iii) 不動産購入

大多数の申請者は(iii)のオプションを選択し、条件としては合計投資額50万ユーロ以上(税別)の、一つ又は複数の不動産を購入する必要がある。当該金額は、無担保・無保証でなければならないという条件もあるため、不動産ローンを設定することはできない。ただし、50万ユーロ以上の金額については、不動産ローンを組んでも問題ない。投資の実行証明のために、管轄の不動産登記所において所有権及び抵当権証明書を取得し、許可証申請時に提出する必要がある。本証明書に購入金額の記載がない場合、申請者は不動産売買にかかる公正証書も提出する義務がある。最終的な売買契約がまだ正式に実行されていない場合でも、申請者が手付金契約締結を公正証書化している場合、本公正証書を提出し、最終的な支払残金を銀行口座に処分できない状態で確保していることが証明可能であれば、申請を実行することもできる。

許可証の承認期間については、申請時に申請者がどこにいるかにより異なってくる。申請者がスペイン国外にいる場合、居住国のスペイン大使館/領事館で該当する査証を申請する必要があり、この場合の承認期間は1年である。一方、申請者がすでに何らかの形でスペインに合法的に滞在 /居住している場合、管轄機関であるUnidad de Grandes Empresasに居住許可証を申請することができ、初回承認期間は3年である。そして、投資が維持されている限り、継続的に5年間更新可能となる。前述のように、不動産購入手続きが完了していないが、公正証書化された手付金支払い契約が締結されている場合、大使館/領事館でのビザ発行期間又は居住許可の初回承認期間は6ヶ月とされている。

最後に、投資家用居住許可証は、非営利目的居住許可証等の他の類似許可証と比較して、多くの利点があることは言及に値しよう。例えば非営利目的居住許可証は、初回承認期間が1年間で、居住のみを許可し(就労は不可)、更新時には年間183日以上スペインに居住していたこと義務付ける、つまりスペイン領内の税務上の居住者となることを求める。しかし、ゴールデンビザの初回承認期間は3年間であり、スペインにて就労又はプロフェッショナルな活動を行うことを許可する。しかしながらそのために、スペインに税務上の住所を定めることを要件としておらず、更新のための最低居住期間も設定されていない。これは許可証保持者に、自身にとって有利な税務上の住所を維持することを可能とする。

前述から、ゴールデンビザは非常に優れた居住許可証であり、迅速かつ容易な形でのスペイン移住を希望する高所得者層の外国人に、絶好のチャンスを与えると結論づけられよう。

 

ルビオ・ジョアン・ルイス (Joan Lluís Rubio)

ヴィラ法律事務所

 

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2023年6月16日