労働者憲章法第51条第1項は、複数人の従業員を一斉に解雇する場合に、当該解雇を「雇用調整手続き(いわゆるERE)」の枠組み内で取り扱うべきか、または、反対に、客観的理由に基づく解雇として従業員毎に個別に取り扱うべきかを定めるための判別基準を規定している。

具体的には、以下の場合には集団解雇となる。

影響を受ける従業員数    総従業員数
10人以下    100人未満
10%    100人以上300人以下
30人以下    300人未満
100%    5人以下

確認できるように、立法者によって用いられた判別時の参照単位は、当該会社の総従業員数である。

では、もし会社が2つ以上の営業拠点を有している場合はどうなるか。会社全体の総従業員数を基準として判別するのか、それとも、雇用関係が終了する従業員が所属する営業拠点の総従業員数を基準とすべきなのか。

この問題は根本的に重要なものである。なぜなら、与えられる回答によって、ある一企業における複数の従業員の解雇が客観的理由にもとづく個別解雇として取り扱うべきか、または、EREの枠組み内で必要な情報の提供及び質疑応答手続きを経たうえでの集団解雇として取り扱うべきか、異なってくるからである。

最高裁は、2009年3月18日付判決においてこの問題について自身の意見を述べる機会を得た。当該判決では、営業拠点が2以上存在する場合であっても、判別の基準として参照すべきは当該企業全体の総従業員数であるとされた。この根拠として、労働者憲章法第51条第1項が、影響を受ける従業員の計算の単位として「会社」と明言していることを挙げている。

しかしながら、当該判決が出された後、欧州司法裁判所は欧州指令第98/1995号の第1条に照らして、本問題について判断を下した。当該判断の内容は労働者憲章法第51条第1項によってスペイン国内法に反映された。

具体的に言うと、欧州裁判所は当該問題について以下の事件における判決で取り扱った。

ウィルソン事件(判例第80/2014号)

ラバル・カニャス事件(判例第392/2013号)

Lyttle事件(判例第182/2013号)

これら判決において、欧州指令第98/1995号では客観的理由に基づく個別解雇との境界線を定めるための基準に用いる単位として「会社」ではなく「営業拠点」としていることから、スペインの立法者は当該指令を正確に国内法へ反映していないと宣言するに至った。

この観点から、最高裁総会は2016年10月17日付の判決において、いくつかのケースにおいては、集団解雇か否かを判別するための基準として用いる数値の単位は会社全体の総従業員数ではなく営業拠点の総従業員数とすべきであることを認める形で、これまでの立場を維持しつつも、問題となっている点についての自身の判断基準を補足しなければならなかった。

そして、最高裁は、営業拠点が判別のための基準の単位として用いられるために満たすべき質的要件と量的要件を決めることを強制するに至った。

この点、質的要件について最高裁は、労働者憲章法第1条第5項に定める営業所の定義と欧州裁判所がその判決で用いた定義、すなわち「確かな恒久性と安定性を備え、一または複数の一定の業務が割り当てられており、かつ、技術的手段や業務を行う能力があると認められるような組織的構造と従業員を備えているような区別された事業単位(ウィルソン事件第49項)」の両方が認められなければならないとした。

また、量的要件について最高裁は、欧州指令及び上述の欧州司法裁判所判決との調和から、営業拠点が客観的理由に基づく解雇との境界を定めるにあたっての数値基準となるには、当該営業所において恒常的に安定して20人以上の従業員を雇用していなければならない、と定めた。

上記をふまえて、最高裁は、上述の質的・量的要件を満たす場合には、会社全体の従業員数ではなく、当該解雇の影響を受ける従業員が従事する営業所の総従業員数の数を集団解雇か否かを判断するための基準として用いることで、司法機関は欧州指令に従った労働者憲章法第51条第1項の解釈をしなければならないと判示した。

 

 

マリナ・イスマエル (Ismael Marina)

ヴィラ法律事務所

 

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2016年12月2日