2017年2月8日付の登記・公証局(DGRN)の決定では、上場している株式会社(SA)において、取締役に欠員が生じた場合における、取締役会決議による取締役の選任が認められる場合についての基準が示された。

同決定においてDGRNは、上場企業の取締役会に欠員が生じた後に株主総会が2回開催されているような場合において、取締役会の決議による選任された者を登記することができるかという点が本件における論点とした。DGRNが本決定内で示した見解の概要は以下のとおりである。

  • 法によって取締役会に与えられている取締役会決議による取締役の選任権限は、取締役に欠員が生じた場合においても取締役会が安定して、完全に機能することを保証する必要性にその基礎をおいており、当該権限は、法が株主総会に与えている権能である取締役の選任の特別な例外として考えなければならない。
  • 取締役会決議による取締役選任権限が与えられるのは、当該辞任による欠員直後の株主総会開催時までの間とすべき。
  • 取締役選任決議を採決した取締役の数が選任された人数の過半数に満たない場合には、当該選任にかかる取締役会決議は登記されることができない。なお、この場合には取締役会は有効に成立しない。
  • 取締役に欠員が生じた場合、株主総会が直ちに新たな取締役を選任しなければならない法的義務は存在しないが、取締役会による取締役の選任がされた場合には直後の株主総会は取締役選任の義務がある。
  • 資本会社法第171条は、取締役の死亡や、大半の取締役の辞任によって取締役の数が員数に満たない状態になった場合にのみ、つまり、取締役会が有効に開催できないような場合に限って、いかなる株主も株主総会招集権限を有すると解すべきである。
  • 定款に特に禁止するような定めがない場合、欠員を補うための取締役会決議による取締役選任については、その直後に開催された株主総会の議案に取締役選任議案が含まれていたにもかかわらず、自主的に選任がされなかったような場合であるならば、認めるべきである。反対に、株主総会で、取締役選任について取り扱う機会がなかった場合には、取締役会決議による取締役選任を認めるべきではない。

上記のとおり、法が取締役の選任権限を株主総会に与えている以上、取締役会決議による取締役の選任が認められる場合は限定的に考えるべきであり、非常に緊急性・必要性が高い場合、もしくは、株主総会自身がその権限を自主的に行使しなかった場合にのみ、例外的に認められると解される。

 

 

大友 美加

ヴィラ法律事務所

 

より詳細な情報につきましては下記までご連絡ください。

va@vila.es

 

2017年3月31日