新規に有限会社を設立する際の設立最低資本金は、これまでは資本会社法において3,000ユーロとされていたが、2022年9月28日付スペイン法律第18/2022号にて、1ユーロから可能となることを定めた。しかしながら、同法第4条に持分出資者の個人責任制度を設け、3,000ユーロ以下の資本金で会社設立後も資本金が3,000ユーロに未到達の間は、法定準備金と資本金の合計額が3,000ユーロに達するまで、利益の最低20%を法定準備金に充当する義務を課した。
最低資本金1ユーロという数字が、新規設立会社に適用されることは十分に明確であった。しかし、これが新規設立会社にのみ適用されるのか、あるいは、当初資本3,000ユーロ(またはそれ以上)で設立された会社で、累積損失、出資金の払戻し、スペインでアコーディオン・オペレーションと呼ばれる会社解散回避のための減資と増資の同時実行の場合などにより、収支バランスのために減資させることを決定した場合も、これが適用できるかの疑念が生じていた。
当該法律第18/2022号には、遡及的な制度もしくは既存会社への適用に関する具体的な言及がないため、このような疑念を持つことは妥当であったと言えよう。同様に、資本会社法第317条または第343条等の減資に関する特定の条文に改正がなされなかったため、当該条文に定める既存会社における減資は、引き続き最低資本金3,000ユーロという量的制限の対象となるのかという問いが残った。当該問題は、立法者が資本会社法第5条、もしくは法律第18/2022号第4条においてシンプルに言及することで解決可能であったはずだが、これを行わなかった。
2023年6月13日付法的安全・公文書管理局(以下「公文書管理局」)の決定は、当該問題に回答を与えるものであった。本件は、ある有限会社が出資持分を払い戻ししたことにより、3.000ユーロから2.115 ユーロへの減資を実行した事に発端した。商業登記官は、最低資本金3.000ユーロ以下を認める法律第18/2022号第4条は、新設会社にのみ適用される、との見解を示した。そして既存会社の資本金を当該数字以下にすることは、現在の資本金金額を基づく支払能力判断を危うくすることで債権者らの利益を害することになる。そして重大な資本損失に対する債権者らの責任という抑止的メカニズムの適切な機能を重大な危険に晒すと考えた。
異議申立て人でもあった公証人による正当な主張の一つには、最低資本金の廃止に関する法改正を現実に対応させる必要性、があった。資本金と、「過小資本」とは対照的なコンセプトである「十分な資本」の差異に注視し、資本金による支払い能力判断機能は著しく損なわれていることを示唆した。実際に、債権者らは今日、資本金の金額を会社の支払い能力評価の指針として利用しておらず、実践的観点からもキャッシュフローのような、多様化かつ明確な他の方法を採択している。この議論は今日の非常にダイナミックな商業取引の現実に即している。実際に、現実が一貫して示すように、資本金が会社の支払い能力の信憑性のある判断基準となるのは、会社設立時のみであり、その後は、資本金だけでは、同等の実質的なキャッシュ水準や支払能力の存在を決定することはできないからである。また、財務指標など他の関連指標が考慮されない場合、資本金額が実際の支払能力をむしろ歪んでみせるケースもありうる。
債権者保証の観点から、最低資本金が3000ユーロに満たない場合、法律第18/2022号は保証制度を定めていることも忘れてはならない。これは、旧資本会社法第4条補足条項に定めた設立時に資本金を必要としない承継設立有限責任会社(La Sociedad Limitada de Formación Sucesiva)についての規定と類似している。現制度では、債権者の保証のために会社資産の担保確保に関し、二つのルールを定める。第一に、利益の20%を3,000ユーロに達するまで準備金に充当する義務である。
第二に、会社清算時、会社の資産が債務支払いの際に不足する場合、会社の債務について3,000ユーロと引受資本金の差額分を連帯して責任を負う出資者に直接責任を課すことである。
最終的に、公文書管理局は、法律第18/2022号の施行前に設立された会社の場合にも、資本金を3,000ユーロ以下に減少させることが可能であるとの判断を示した。さもなければ、ケース毎の責任の二重基準を確立すること、ひいては最終的な債権者の利益確保がないことを意味する。同様に、既存会社にとっては、法律第18/2022号に定める2つの責任メカニズムのおかげで、債権者の立場を害することはないという事実にもかかわらず、持株比率や財務状況を調整する可能性を奪われることになり、不当な不利益を被ることになる。我々は、これを完全に論理的な見解であると考える。
ヴィラ・エドアルド (Eduardo Vilá)
ヴィラ法律事務所
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2023年9月29日