はじめに、資本会社の株主総会の開催場所を決定する問題について理解するため、スペイン資本会社法(LSC)第175条の定める内容(下記)に留意しなければならない。

「定款に特段の定めがない限り、株主総会は会社の本店所在地がある市町村内で開催される。株主総会招集通知において開催場所の記載がされていない場合、株主総会は会社の本店所在地で開催がされるとの招集がされたものとみなす。」

また、株主総会招集手続き省略総会については、第178条第2項で、「招集手続き省略総会は国内又は国外のあらゆる場所において開催することができる」とされている。

これら条文の解釈に関して、従前の公証・登記局(現在の法的安全及び公共の信頼管理局)の決定、例えば2019年10月30日付の決定を参照すべきである。当該決定では、ある会社の定款が、会社の株主総会開催地を会社本店所在地とは別の市町村とする旨を定めていることが問題となった。決定によれば、それは可能ではあるものの、以下の2つの限界があるとされた。

(i) 株主総会開催地が適切に確定されていること。

(ii) 開催地は、市町村又は都市や村といったより小さな地域に、地理的に限定されていなければならない。したがって、地理的な限定なくあらゆる場所と定め、開催地の決定を取締役の意思に委ねることは、株主の株主総会への出席権、情報請求権、議決権の行使を損ねる可能性があるため、認められない。

この条件をベースとして、2019年6月18日付決定において検証されたケースでは、商業登記官は会社の本店所在地とは異なる場所、具体的にはイタリアのある町で開催された株主総会での決定にかかる公正証書の登記を却下した。当該場所は、当該会社の定款の「株主総会はスペイン又は国外のいかなる場所において開催することができる」との規定に基づき選ばれた。商業登記官は、取締役が自由に株主総会開催場所を決定できることを認めることについて不確実性があるものとし、上述の資本会社法第175条の条文規定の慣習に従い、株主総会の開催場所は会社本店所在地(本件の場合はマヨルカ島のある街)であるべきと理解しなければならないとした。

当該決議の注目に値する点は、本ケースにおいて、公証・登記局が商法第20.1条に定められる登記の正確性の原則に関する規制を利用しなくてはならないことである。すなわち、「登記の内容は正確、有効であると推定される。登記の記録は裁判所の保護下にあり、不正確または無効の裁判所の宣言が登記されていない限り、その影響を及ぼす。」というものである。

登記官は、公証・登記局によって取り消された否定的な評価を確認するだろう。なぜなら、スペイン国内又は国外のいかなる場所での開催を認める定款の定めが有効でないことは確かであるからである。2005年に商業登記所で登記された定款に基づいて株主総会が招集されたことも、同様に事実である。したがって、これら定款は既に登記の評価対象となり、商業登記所に提出がされているため、現在はその内容は既に裁判所の保護下にある。

公証・登記局は上記の点に関し、登記された定款条項がその変更の結果として法律に適合しない場合は、法の内容が優先されなければならないことを明確にしている。しかし、今回の決定が出されたケースでは、当該定款は、当該時点で有効だった法令に則って評価がされ、現行のスペイン資本会社法で定められてはいないものの、内容の変更はされなかった。上記の結論として、登記された定款で認められた場所で開催された株主総会は有効であると理解しなければならず、登記官が株主総会の開催場所の有効性を再評価することはできない。

 

 

マデロ・ハイメ (Jaime Madero)

ヴィラ法律事務所

 

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2020年10月9日