商事会社の取締役は、その職務遂行のために以下のような固有の義務を有する。

・忠実義務

・利益相反取引の回避義務

両義務ともスペイン資本会社法第230条に規定された一般的な原則であり、必ず遵守しなければならない性質を有し、両義務を制限するような定款条項は無効とされる。

上記の前提をふまえた上で、本稿では2018年9月26日にバルセロナ県高等裁判所にて判断されたDIVERIS PUNT(会社)のケースの判決を検証する。DIVERIS PUNTの取締役は以下の者によって構成されていた。

自然人: José M.氏

法人A: J.A.J, S.L.(有限会社)

法人B: PROMOCIONES JE, S.L.(有限会社)

訴状によれば、上記の取締役は資本会社法第230条に規定された禁止条項に違反する行為を行なったことを理由に訴えられた。

José M.氏及びJ.A.J, S.L.社は、法人取締役であるPROMOCIONES JE社が、

(i) PROMOCIONES JE, S.L. 及びETYSD, S.L.といったDIVERISと同様の会社目的を持つ二つの会社の取締役を兼務していることにより、利益相反に該当する、

(ii) DIVERIS PUNTが実施している建設工事をETYSD, S.L.に請け負わせたことは競業避止義務違反にあたる

として、同法人取締役を訴えた。

法人取締役PROMOCIONES JE社は、本件の原告は被告(法人取締役PROMOCIONES JE)が、PROMOCIONES JE, S.L.及びETYSD, S.L.の一人取締役であることを当初より認識しており、実際株主たちは、原告が土地を提供し、被告がETYSD, S.L.を通して工事を請け負うことに合意していた、と反論した。

第一審は、DIVERIS設立時にはすでに、被告が取締役を兼務している会社の活動は行われていたために、本件は競業避止義務違反に該当しないとし、訴えを棄却した。実際、PROMOCIONES JEはDIVERISの出資持分の50%の保有者である。原告は被告がDIVERIS以外にもさらに二つの建設会社の取締役に就任していること、および、ETYSD, S.L.が工事を請け負うことになることも認識していなかったと控訴した。

バルセロナ県地方裁判所は、法人取締役の法的解任のためにはすでに判例が数例存在しており、資本会社法第230条に則って、忠実義務違反行為や会社に害となるような行為を証明する必要はなく、以下に挙げる点を証明すれば良いとした。

  1. 被告はある有限会社の取締役であること。
  2. それと同時に、雇用者(自営業)もしくは被雇用者(取締役ではある必要はなし)として、で経営する会社の会社目的と同様、もしくは類似の業務を行っていること。
  3. 2で言及した業務の実施に関し、経営する1. の会社の社員総会にて承認を得ていないこと。

バルセロナ県地方裁判所は、しかしながら、法人取締役が経営する会社の会社目的と同様、もしくは類似の業務を行う場合の社員総会の承認は明示的でなければならず、本件に関しては、DIVERISの株主が100%の出資持分を取得すれば、J.A.J, S.L.が建設工事を行う土地を提供することで、被告は、いずれかの建設会社を通じて、建設工事を請け負うことになる、と示した。

上記合意は、自身及びJ.A.J, S.L.の代理人として行動したJosé M氏によって受け入れられた。

バルセロナ県高等裁判所は、本件訴えは善意の原則に反し、自身の行動の原則に反するものであると結論づけた。

 

 

エステル・ウゴ (Hugo Ester)

ヴィラ法律事務所

 

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2018年12月7日