2021年8月6日付スペイン官報にて、2021年7月28日付法的安全・公文書管理局(以下「公文書管理局」という。)決定が公示された。当該決定は、ある有限会社(S.L.)の定款変更にかかる公正証書の登記申請を、マドリード第18商業登記書登記官が却下したことに関するものである。

本件において、会社は、株主総会決議の定足数に関する規定、及び株主排除制度に関する定款規定の変更をしていた。本稿では、株主排除に関する部分について分析する。

当該会社の定款第35条には、以下の定めがされている。

  • 「- 以下の事項は株主排除の原因となる。

c) ある株主による株式取得権の行使に基づく株式譲渡義務の拒否または不履行」

  • 「- 株式譲渡義務の不履行により、上記第1項c)の原因に基づき株主排除がされる場合において、排除される株主に対して、株式償却の返却金として戻される金額は、会社から (i)現金または現物により(ii) 当該株式の償却合意から1年の期間内に支払われる。」

また、同会社の定款第10条は、義務的譲渡について以下のように定めている。

  • ある株主が当会社の50%以上の株式を保有することとなった場合、当該株主は、当会社の全株式を取得する権利を有することとなる。」
  • 他の株主が譲渡に応じない場合、株主排除の規定が適用される。
  • 株式の取得価格は、「株主総会で承認された直近の貸借対照表の価値に基づく合理的な金額とする。また、株式取得価格は、当事者間で別段の合意がない限り、現金で全額支払われなければならないが、株式譲渡にかかる公正証書作成日から最大1年間延期されることができ、株式取得者が自由に決定するものとする。」

これに対して登記官は、以下の理由により登記を拒否した。

義務的譲渡の場合における株式取得価格の支払いの期間を、株式譲渡にかかる公正証書作成日から最大1年間延期することはできず、また、株主排除の場合においても株式の払戻金の期間を1年間延期することはできない。これは、株主排除と義務的譲渡の類似性及び義務的譲渡の不履行の結果としての株主排除であることを鑑みると、株式取得価格の支払いの1年延期は、資本会社法第356.1条に定める株主排除の場合の株主への払戻金の支払い期間と相容れないからである。2020年11月23日付決定において公文書管理局が既に示したように、株主に対して株式の資産価値の実現に際する遅延を課すことは、定款によってはできない。

この判断について、異議申し立てがなされた。

公文書管理局は、自身が「原則として、株式の資産価値の支払いに際して株主に遅延を課すことはできない(排除株主及び株主分離権の行使にかかる株式の払い戻しについての資本会社法第356条参照)一方、この原則の過度に厳格な適用は、会社株式の譲渡可能性の法令及び定款の制限が応じる社会的利益を損なう可能性があることも、同様に真実であると強調している」ことを認めた。また、「そのため、即時払いを課すような法的規則(資本会社法第110条「相続による株式譲渡にかかる支払い時期」参照)が存在しない限り、合同会社(S.L.)の形成原則を制限せず、結果として双方の利益の合理的構成と相容れるような支払い延期にかかる条項を否定すべきではない」と宣言した。

また、本件について、公文書管理局は以下のように分析を行った。「問題となった定款条項は、実際のところ、一定の割合の株式資本の保有者となる株主に与えられる、会社の残りのすべての株式についての優先的買取権の結果として株式譲渡義務を制定している。そのため、生存者間での自発的株式譲渡における問題であって、強制的譲渡の問題ではない。」「そして、株式優先的買取権の特異性のために、株主排除制度の無差別的な適用から生じる結果を当てはめることはできない。」また、資本会社法第356.1条の適用範囲について判断する必要なく、「株式譲渡義務を(公文書管理局の方針に基づき、合法とみなされるべき価格支払いの延期の条件のもとで)履行しない場合に、定款の規定及び全株主の合意に基づき、制裁として、当該義務を履行した場合に譲渡されるべき株式価値の払戻金と同条件で不履行株主の排除が行われることは、正当化される。」

そして、公文書管理局は、これらの理由から、本件において分析されている条項、すなわち、不履行株主に対して1年間の支払い延期を課すことは、自由自治の一般的制限を超えず、また実務的に克服不可能な客観的困難を伴う株式価値の実現を妨げない制度を定めるものであると考えるべきである、と結論づけた。

他方、特定のケースの状況によっては、株式価値の支払い又は払戻しの延期は株主に対して過度又は不当な関係、又は第三者への損害となる可能性があり、そのような状況に対応する形でのこの点にかかる最終的な司法によるコントロールは、ここでは行わない、とした。

最終的に、公文書管理局は、譲渡された株式の支払い延期に関する部分についての異議申し立てを認めた。

 

 

ヴィラ法律事務所

 

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2021年9月17日