2021年2月26日、スペイン官報にて所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とスペイン王国との間の条約(以下「日・スペイン租税条約」)が公示された。2021年5月1日 に施行は開始されたが、最重要項目については2022年1月1日まで適用開始されていなかった。

新租税条約は1974年以降有効であった旧条約を全面的に改正するものであり、スペインにおいては個人所得税、法人税、非居住者税に影響を及ぼし、日本においては所得税、法人税、復興特別所得税及び法人事業税に影響を及ぼす。

日本への投資を希望するスペイン企業や、反対にスペインへの投資を希望する日本企業は、新租税条約が、旧条約に定められていた税率を下方修正し、投資家居住国においてのみ課税されるという前提を設定することで、二国間における投資のための好ましいシナリオを設けていることに興味を抱くだろう。新租税条約によって導入され、両国間の投資に影響を与える主要な改正点は、以下のとおりである。

  • 配当(第10条)について、新租税条約はスペイン又は日本に親会社を有し、他方に子会社を有す企業にとって特に有益となっている。それは、子会社が親会社に対して配当を行う場合、子会社は旧租税条約で義務付けられていたような10%の源泉徴収を行う必要がなくなり、過去12ヶ月間における親会社の子会社議決権保有率が10%以上であれば、当該配当について課税されるのは親会社の居住国においてのみとされたからである。加えて、上記要件を満たさない個人投資家、または投資会社である場合、配当にかかる税率は旧条約の15%から5%へと修正された。
  • 利子(第11条)については、受益者の居住国(源泉地国)においてのみ課税される。これにより、旧条約における10%の源泉徴収義務がなくなった。ただし、債務者もしくはその関係者の収入、売上げ、所得、利得その他の資金の流出入や配当などを基礎として利子が算定される場合には、利子が生じる他方の国においても10%の税率にて課税される。
  • 使用料(第12条)については、利子の場合と同様、新租税条約は受益者の居住国においてのみ(源泉地国)課税されるものとし、旧条約で求められていた10%の源泉徴収義務は不要となった。

上述のように、新租税条約により、投資家は所得が生じた国における税率の引き下げ、場合によっては、当該他方の国においての免税、所得が生じた国における源泉徴収義務排除という恩恵を受けることとなる。このことは、間違いなくスペイン・日本間の経済関係の発展に資するものであり、両国の企業が商的関係を強化することのインセンティブとなるだろう。

 

 

ルビオ・ジョアンルイス(Joan Lluís Rubio)

ヴィラ法律事務所

 

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2022年2月4日