スペインにおける配当決定は、資本会社法第93条、160条a)及び273条第1項に定められているように、株主総会決議よる。

会社に利益が存在するにもかかわらず、株主総会が無配を決定した場合、資本会社法第348条補足条項は、反対株主に対し、会社から撤退する権利を認めている。

しかしながら、会社の利益分配を願う少数株主にとっては、これが唯一の救済措置なのだろうか。このような場合に、会社に配当を促すための会社行動の可能性を検討する必要があるのではないだろうか。

多数株主が少数株主の意志の尊重なしに、会社からの少数株主の追放を目的とし行動するケースが、特に配当の分配において数多く見受けられる。これは、資本会社法第204条にいう多数派株主による濫用的行為と解釈され、非難に値する。したがって、会社の利益を配当という形で分配する代わりに利益準備金に配分するという場合、株主総会決議の無効を主張する根拠となり得る。

しかし、当該申立てが成功した場合、株主総会で採択された決議の無効判決が出され、同じ議題が議論される株主総会の開催を新規に必要とすることになる。現実には、出資持分比率に変化がない限り、あるいは、多数派株主の意見に変更がない限り、新しい決議内容が以前の決議と同様となることが予測される。そのため、決議に異議申立てをするために再び訴訟を起こさざるを得ず、結果的に抜け道のない連鎖状態に陥る。これでは、少数派株主の正当な権利保護が効果的に行えない。

当該連鎖を断ち切るには、裁判官が、多数派株主の濫用の有無を推定し、事前の株主総会の決定なしに、同時に配当の分配を命ずる決定を下すことができればよい。この点については、株主総会の決定に背くものであり、スペイン資本会社法にて法的に留保された権限を侵害しているため条文違反であると意義を唱えることができる。他方で、企業利益には、損害や不利益が生じておらず、むしろ株主に生じている場合にも、資本会社法第204条の企業行動が適用されるのか、という疑問も生じうる。

2023年1月11日付スペイン最高裁判所判決第9/2023号(控訴審第3319/2019号)では、上記の疑問に対して、主に多数派株主の少数派に対する忠誠、および実効的保護の原則に基づき判断を下した。本件では、2人の株主が関与しており、そのうちの1人(多数派株主)は、会社の一人取締役であると同時に、未分配利益を受領する会社の多数派株主でもあった。さらに、少数株主は一時期、多数派株主とともに会社の共同取締役に就任し、提供サービスに対する報酬を受領していた。多数派株主は、ある時点で会議の支配権を行使し、少数株主を取締役から解任した。そして、以後、過半数の議決権を行使して、利益を準備金に配分し、当該利益を親会社(多数派株主が経営管理)の資金調達にまわしていた。同様に、グループ内の他の会社とともに同社はリファイナンス契約を締結し、当該会社が415,000ユーロの保証枠を負っていることから、当該契約の有効期間中は配当を行わないことを約束していた。少数派株主は、株主総会において、2015年および2016年の2会計年度連続して利益を準備金に配分する決定がされたことに異議を唱え、同社に対し、当該2年間に得られた配当金を全額再分配するよう求めた。

スペイン・ラ・コルーニャ市第2商業法廷は、2017年12月29日付にて、本請求を全面的に棄却する判決を言い渡した。 しかし、ラ・コルーニャ県裁判所は、「…ここで申立てられた決議は、会社に損害を与えないが、多数派株主(GSS Atlántico社の保有する利益準備金が、保証や返還圧力なしに、融資として流出している)の利益のために採択されたもので、濫用的である…」のように、一部控訴判決内容を支持する判決を示していた。

当該ラ・コルーニャ県裁判所所見は、最高裁判決でも支持されるだろうが、いわゆる「企業利益」が会社資産の保全にとどまらず、株主の利益でもあることを確認するために、上記のようなケースにおいて企業措置が適切か否かに関する疑念を晴らすものである。

当該所見は、少数派株主であった取締役が解任されるまで会社がとってきた配当ポリシーが継続されなければならないという意味において、多数派株主の少数派に対する忠実義務に関する必要な認識と結びついている。多数派株主が、会社及び少数派株主を支配している状況下では、少数派株主は配当もしくは取締役報酬を通じての利益へのアクセスもできず、出資金を有利に換金することもできない、身動きの取れない状態に陥る。

最高裁判決では、同社が無配当という条件の契約を締結したものの、当該契約締結の動機は415,000ユーロを上限とした債務保証をするためであり、2015年と2016年には準備金が当該債務額の5倍近くに達していたことを指摘し、無配当であることは重要ではなかったことを強調した。したがって、無配当決定は、会社の「合理的な必要性」に呼応していなかったとした。最高裁は、無配当という合意を相対化した際に、目的に意図的に従わせるために、義務の厳密な効果を剥奪したことに着目した。つまり、準備金が債務保証額をカバーしている以上、無配当決定は均衡を保つためと考慮できず、かえって契約の濫用性の証明となる、と考えた。

もう一つの問題は、裁判所が、会社に配当決定を課すことができるかどうかという点である。控訴人は、第一審裁判所が株主総会の内容を曲解しており、株主/出資者総会決議がなければ、いかなる場合であっても配当を行うことはできないと主張した。しかしながら、最高裁は、裁判所が無配当決議の無効性を判断した場合、当該判断は、他方の法的選択肢の承認、すなわち配当の分配を認めるという意味で、控訴審の見解を支持した。裁判所が総会決議の無効性を宣言するにとどめた場合、裁判所が少数派株主に認めた権利の合法的な充足が、多数派株主が支配する株主総会の承認次第となり、少数派株主の効果的な保護は不可能であろう。言い換えれば、権利が認められたとしても、株主総会が権利行使を認めないため、絵に描いた餅のようなものとなる。

最後に、最高裁判決は、2012年に行われた直近最後の分配の割合を参考し、会社利益の100%ではなく75%のみを分配するという控訴審判決を支持した。したがって、最高裁は、資本会社法に則り株主/出資社総会に留保された決定に関する判決を下しただけでなく、分配すべき配当額をも定めた。これから、株主総会決議に対する異議申立てを支持した場合、株主総会に適切な決議を採択する裁量権の余地を残さずに、裁判所が決定することを妨げず、以降は裁判所決定が有効となることが理解できる。

 

 

ヴィラ・エドアルド (Eduardo Vilá)

ヴィラ法律事務所

 

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2023年2月17日