適法性の原則は、商業登記所に登記がされる公正証書が、完全かつ有効でない公正証書が登記されることを防ぐため、事前の検証、確認及び評価を要請する。
当該予防措置により、公正証書に記載されている内容が保証され、登記事項が正確かつ有効であることの推定がされる、いわゆる登記の公信力を公正証書に与えることが正当化される。 では、商業登記所に無効な公正証書が登記された場合はどうなるのか。 登記事項の修正及び抹消は、利害関係のあるものによる合意、もしくは当該処理を行う旨が記された裁判所の決定が必要となる。 無効な公正証書が登記された場合、その後の登記にも影響が及ぶか。
その後に行われた登記は全て無効とされるため、抹消可能となる。典型的な例は、商業登記所に取締役選任の登記申請をおこなったが、何らかの理由により内容に不備があったという場合である。この場合、当該取締役によりなされた決定事項の無効となり、従前に登記された他の公正証書、例えば第三者に対する権限の委譲の公正証書にも影響を及ぼす。しかし、登記された公正証書に与えられる正確性と真実性の推定は、それらの無効宣告が登記されるまでは失われない。
資本会社法第208条第2項(以下、“LSC”)によると、商業登記所に登記された内容を無効とする最終的な決定は、当該内容を抹消するのみならず、その後に登記された公正証書で当該決定内容と矛盾するものについても無効とみなす。
では、登記事項が無効決定に矛盾しているかについて誰が判断をするのか。
この点について、2015年12月1日付で法務省登記・公証局(Dirección General de los Registros y del Notariado、以下「DGRN」)から発令された直近の決定では、無効決定に矛盾している登記事項の判断について、「商業登記官は、無効決定による影響を受ける登記事項の範囲を判断する責任は負わない。」とし、登記事項が裁判所の決定と矛盾するかの判断は「裁判官に専属的に帰属する手続きである。」旨が言及された。従来のDGRNの決定では、登記官は「文書(判決)によってどの登記事項に対して抹消命令が出されるのかにつき疑う余地なく推測ができる場合には、根拠なく形式を重んじて厳格な判断をすべきではない。」と示していたが、商業登記官は、裁判所の決定内に、決定内容に矛盾し、したがって抹消されなければならない登記事項について、一般的な形ですら記載がされない場合、登記事項の抹消を行うことができない。
言うまでもなく、利害関係人が自身の判断に基づいて無効決定を解釈し、抹消されるべきと考える登記事項についての私的請願制度もあるが、無効決定が適用される具体的な範囲を定める管轄裁判官の代わりとなることはできない。
したがって、商業登記所に登記されている公正証書を法的に無効にしたい場合は、LSC第208条2項に従い、裁判所に対し、決定内に抹消されるべき登記事項を明確に定めてもらうよう申請することが重要である。上述のとおり、裁判所の決定の影響が及ぶ範囲を判断する役割は商業登記所に属していないため、単に「当該決定と矛盾するような登記は抹消される」という内容の指示では十分に機能しない。
ヴィラ法律事務所
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2021年1月22日