登記・公証局は2018年5月30日付けの決定第8053号にて、株主総会決議に瑕疵がある場合には、たとえ決議無効確認の訴えの提訴期間を経過していたとしても、商業登記所はその登記を拒否するとの判断を示した。

2017年4月11日、マドリード商業登記所に以下の株主総会決議が記載されている公正証書が登記のために提出された。

(1)株主総会開催地はバレンシアであった。

(2)本株主総会には行使できる議決権の54.32%の株主が参加した。

(3)本株主総会において、会社の解散及び清算貸借対照表が、満場一致で決議された。

2017年4月27日マドリード商業登記所は、以下の記載事項に瑕疵があるとして、前述の公正証書の登記を拒否する決定を通知した。

  • 本件会社の定款第11条で、解散決議の採択と清算貸借対照表の決議に必要な定足数は株主の70%と定めるのに対し、本株主総会の出席株主数はわずか54,32%に過ぎなかった。
  • 本会社の定款では、本店所在地以外での株主総会の開催の可能性を規定しておらず、バレンシアにおける株主総会の開催は認められるとは言えない。 したがって、本会社株主総会のバレンシア開催は、資本会社法第175条に違反する。
  • 当該公正証書の適正な審査のためには、株主総会の全議事録の提出を要する
  • 本件決議証明書には、発行日の記載がない。

同公正証書は、2018年1月25日、マドリードの商業登記所に改めて登記申請のために提出された。登記申請時に、2018年1月8日付の清算人の一筆が添付され、そこには以下に述べる理由に基づき本件決議の定足数は株主の70%という定めに従う必要はないと記載されていた。

a. 本会社は解散事由に該当する状態にあった

b. 株主総会決議から既に一年が経過しており、決議無効確認の提えの期間を過ぎていることから、当該瑕疵は補正されたと理解できる。

2018年2月15日商業登記官は二度目の審査通知を発行し、本株主総会議事録の全文を提出したことによりその部分の瑕疵は補正されたが、本決議証明書には発行日が未記載であること、定足数および株主総会開催地に関する瑕疵は引き続き存在するとし、本公正証書の登記を拒否した。

2018年3月14日、公証人Joaquín Borrell García氏は2018年2月15日付け却下決定通知に異議を申し立てた。García氏の論拠を以下に挙げる。

  • 本件株主総会決議は、決議無効確認の訴えの提訴期間が満了していることにより、すでに有効性が確認されたとみなされる。これにより本決議は撤回不能となり、あらゆる面で法的有効性を保有することとなる。商業登記所は新たな法的現実を受け入れるべきである。
  • 本件事実は公の秩序に関するものではなく、ゆえに資本会社法第205条第1項の違反に当たらない
  • 提出された決議証明書は、会社の取締役の証明者としての権限により、決議に異議申し立てがなかったという十分な証拠となりうる。

最終的に2018年3月15日に登記官は自身の審査を再確認し、本件を登記・公証局に公示した。以下に登記官の説明を記す。

  • 本件決議の無効性に関し異議の申し立てがなかったとしても、ここで問題となるのは、異議申立人であるGarcía氏が論拠としているように、決議無効確認の訴えの提訴期間満了をもって商業登記所での登記を行うことができるとして良いのかという点である。
  • 決議無効確認の訴え提訴期間満了が存在したかどうかは、公正証書の提出によっては明確にはならない。また登記官は権限の性質上確認することができず、その確認は裁判所に属するものである。
  • 本件株主総会決議は、公の秩序に関するものではないと判断することはできない。当該判断も裁判所に属するものである。2007年最高裁判所判決第596号は「株主総会決議の分野における公の秩序という概念は不確定であると言え (…)当該決議が株主総会に不参加の株主及び少数株主保護への攻撃と推測される場合に適用される、としている。
  • 本件異議申立書は、決議の無効性確認の提訴期限満了と、決議の有効性を混同している。決議の無効性確認の提訴期限満了はすなわち無効性を取り消し、有効に取り変わるものではなく、無効性の確認請求という形では異議申し立てができなくなるだけである。

決議の無効性が確認された場合、取締役は法の遵守を要求され、株主総会にて決議を取り消す、あるいは必要な場合には、法に沿うように、該当する決議に代わるような決議を採択するなどの必要なアクションを取る必要がある。

 

 

ブランコ・ペドロ (Pedro Blanco)

ヴィラ法律事務所

 

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2018年7月6日