スペイン資本会社法第214条は、会社取締役の任命権は、株主総会に帰属することを定める。
そして、一法人が取締役に選任された場合は、その職務を永続的に行使するために、同法人取締役は自然人を1名代表者として選任する必要があるとも定めている。(同法第212条Bis1項)
上記資本会社法第212条Bis1項、もしくは商業登記所規則第143条において、当該法人取締役の自然人代表者の任命権が誰に帰属するかの規定がないためこれを検証するためには、我々は学説、判例に頼らねばならないことになろう。
2019年12月11日付登記・公証総局(現在の「法的安全・公文書管理局」)の決定は、その一例である。
当該案件は、法人取締役に選任されているある一人株主会社の自然人代表者が、受任者が作成した公正証書によって解任されたことに発端する。本件を認証した公証人は、受任者の権限は、当該公証人自身が認証した受任者に付与された委任公正証書に記載があるとし、当該証書では、受任者に対し、取締役の職務を果たす自然人の選任・解任を公示するに十分な権限が付与されていると述べた。
商業登記官は、法人取締役である会社の経営機関の決議の不在を理由に、当該自然人の代表者任命登記を拒否した。
当該決定に異議を唱えた公証人は、法人取締役は、任意の代理人または法定代表者を通して一自然人を代表者として選任することができ、任意の代理人には、十分な権限を付与されたいかなる受任者もがなりうると主張した。
登記・公証総局は、法人取締役である会社の取締役会決議が存在しないことに関する瑕疵について、以下の論拠に基づき、部分的に異議申立てを支持した:
1.-既に確立した判例
1991年3月11日付決定以降2012年5月18日付決定までの間に、以下の3つの判例内容を確立してきた:
a) 取締役を選任した経営管理対象会社ではなく、法人取締役である会社が、代表権を行使する1自然人を選任する;
b) 実務上、取引上の理由から、選任する自然人は一人でなければならない;
c) 選任された1自然人は,取締役職に固有の責務の安定的行使のために,永続的な代表者として法人取締役を代表して行動する。
2.-登記義務 、方式
a) 法人取締役の選任、及び自然人の代表者選任は、経営管理対象会社の登記簿に同時に登記されなければならない。
b) 代表者となる自然人が、法人取締役である会社の役員である場合、法人取締役の経営機関が発行した決議証明書を提示すれば十分である。
c) 上記に該当しない場合、任命権は、委任公正証書に記録されなければならない。
3.- 自然人代表の任命権限
1自然人の代表者任命は、経営管理対象会社の内部的な経営行為ではなく、法人取締役として選任された会社の経営機関に属する独占的な権限であり、この行使には、委任状または権限委譲のいずれかの性質を有さなければならない。
上記を理由に、任命手続きの正式な確立には、法人取締役の経営機関が発行する委任公正証書もしくは委任の決議証明書のいずれかが必要となる。
2010年9月22日付登記・公証総局決定によると、法人取締役の代理人による1自然人代表の選任は、当該代理人が委任公正証書を公証人に提示し、さらに証明された代理権を行使するに十分な能力があることを表明した場合、これを拒否できないとしている。
株主総会にて自然人代表選任が行われた場合、という選任権に関する別の側面の問題は、(2013年7月10日付登記・公証総局決定のケースのように)当該決議を、法人取締役の代表取締役が同自然人の株主総会選任決議を公示することで、これに同意していると理解することで是正できる、とした。
ボスク・ミレイア (Mireia Bosch)
ヴィラ法律事務所
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2023年10月13日