さる5月9日、一般に「会社デジタル化EU指令」として知られる2019年6月20日付EU指令第2019/1151号を含む、公証・登記手続のデジタル化に関する複数のEU指令(以下「本指令」という)をスペイン国内法に置換した2023年5月8日付法律第11/2023号(以下「本置換法」という)が交付された。

有限会社設立時に、公証人役場への出頭を必要としないオンライン公証手続きは、本置換法の主要な新規定の一つである。本置換法が公布される以前から、スペインでは、CIRCE(Centro de Información y Red de Creación de Empresas、日本語訳:「情報センターとビジネス創成ネットワーク」の略称)を通じてオンライン上で有限責任会社を設立することが可能であったが、当該形態での会社設立時には、公正証書作成のために、公証人役場への出頭を必要としていた。

今回の、本指令の国内法への置換えにより、有限責任会社設立をオンライン上で実行する可能性は、現在、旧資本会社法の改正条文を承認した2010年7月2日付勅令第1/2010号(以下、「改正資本会社法」という)の第22条a項に規定されている。当該条文は、会社設立にオンライン手続きが適用されるのは、金銭出資により設立する有限責任会社のみが対象であると定め、その他の種類の会社、または非金銭出資によって設立する有限責任会社の設立は、電子的会社設立システムから除外される、としている。

既に言及した資本会社法第22条改正条項の内容は、第3章改正条文(第II編)において以下のように展開する:

– 会社設立のための電子的フォームの使用を定める。(スペイン語に加え、州の公用語、英語での作成が可能)

-会社設立に必要な金銭出資の実行方法の決定。電子決済サービスプロバイダーによるか、もしくはEU加盟国内に設立された金融機関が提供する支払手段で、振込人の特定が可能なものである必要がある。

-設立公正証書の登記完了にかかる期間は、公正証書および定款の標準フォーマットを使用する場合は商業登記所に申請してから6営業時間以内、その他の場合は申請から5営業日以内と定められている。

-(唯一、会社設立の場合のみ)例外として、身分証明書の偽造回避、もしくは、設立人の能力及び代理委任状の確認目的といった公益上の理由のため、公証人は設立人の面前出頭を要請することができることが定められている。

会社設立オンライン手続きの例外措置として、公証人役場への出頭の必要性については、既述のいずれかの理由に該当する場合、公証人は、出頭要請の理由を公正証書に記載しなければならない。

改正資本会社法に加え、本置換法は、会社のオンライン設立実施を可能とするため、以下に挙げる規則に数々の改正を導入した。

  1. 公証人法

以下にかかる特定の条文が改正された:

会社設立時作成される公正証書について電子プロトコルの確立、すべての公証文書の電子化、公証人に対する電子署名の真性コピーを発行する権限の付与、特定の案件(会社設立、委任状作成、総株主会議事録等)に関する公正証書作成を、ビデオ会議によって実行する可能性の保証、2015年10月1日付行政機関の共通行政手続に関する法律第39 /2015号第9条に定める身分識別の電子システムを利用することで、手続き本人に公証人の電子事務プラットフォームへのアクセスを提供。

  1. 商法

改正第17.5条文は、EU加盟国内に設立された商業会社と支店に関する情報を、商業登記所を通じて無料で入手できる可能性を定めた。

  1. 不動産ローン法

以下の一連の改正を導入した: 全国レベルでの単一の総合電子本部の設立、市民に電子的手段による管轄機関との通信を可能とし、電子形式で登記簿謄本や登記事項証明書を入手可能とし、対象不動産に関する最新情報の入手を可能とする登記データシステムの構築。

EU指令のスペイン国内法置換によって、会社法関連法制度のデジタル化が促進していることは明白である。しかしながら、本置換法によって導入されたわが国の法制度改正は、会社法制、特に会社設立手続きに大きな変更をもたらす。したがって、利害関係者、公証人、商業登記官、銀行等の関係当事者らがどの程度迅速に、会社法関連のデジタル化に対応できるかを見守る必要があろう。

本件に関する詳細、特に会社設立のオンライン化については、va@vila.es までEメールでお問い合わせください。

 

スニガ・アルベル (Albert Zúñiga)

ヴィラ法律事務所

 

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2023年9月1日