COVID-19ウィルスにより引き起こされたパンデミックは、世界中の法、社会、経済の実務における多くの側面と同様、住居に関する問題、具体的には、強制退去手続き及びこの法的執行処分において弱者である賃借人の保護にも影響を及ぼしている。

この点について、スペインでは2020年3月31日付勅令法第11/2020号と、同法の第1条を修正し第1条bisを追加した2020年12月22日付勅令法第37/2020号の内容に着目すべきであろう。

法の改正においてもっとも注目すべき点は、簡潔に言うと、以下の点となる。

  • 一時停止が適用されるのは、民事訴訟法第250条第1項第1号に定められる賃料の支払い遅延や未払いを理由とした強制退去や立ち退き処分のみではなくなったこと。申請手続においていくつか異なる点はあるものの、仮処分、占有保護及び登記済み物権の保護にも適用がされることとなった。
  • 今回の緊急事態宣言発令期間中、すなわち、2021年5月9日までは、強制退去及び立ち退き処分は一時停止されることとなる。
  • 一時停止が適用されるのは、経済的に脆弱な状況にあり、自分自身や同居人のために代わりの住居を見つけることができない状況にある賃借人に対する強制退去/立ち退き処分である。上記状況は、COVID-19の影響から直接引き起こされたものでない場合であっても、良いとされる。経済的脆弱性の状況がCOVID-19の拡大による影響の結果でなければならなかった従前の制度と比べて、これは新しい点である。結果として、今回のパンデミックが引き起こしている直接又は間接的な経済的な結果にまで保護の対象が拡大されたと言える。

また、賃貸人や所有者に補償金の権利が与えられることとなった。これは斬新な措置といえ、賃貸借の法的関係における相手方に与えられる保護についても言及することは重要である。この補償を受領する権利は、賃借人の脆弱性の状況に対応するための適切な対策を記したソーシャルサービスに関する報告書の発行がされた日から3ヶ月以内に、管轄行政機関がそのような対策を講じなかった場合に発生する。

この補償の申請は、緊急事態宣言が終了する日から1ヶ月を経過する日、すなわち、2021年6月9日まで行うことができる。

補償金は当該不動産が所在する周辺環境における住宅の賃料の平均値相当の金額となる予定である。この金額は、住宅賃料参照指数やその他の賃貸借マーケットを代表する客観的な参照値に加え、賃貸人が負担することが証明された住居のランニングコストなどをもとに決定がされる。強制退去の一時停止が合意されてから、裁判所により当該一時停止が解除されるまで、または緊急事態宣言が終了するまでの期間に生じるすべてである。

上記の例外として、もし見積もり補償金額が賃貸人がこれまで受け取っていた賃料を上回る場合には、実際の補償金額は上記の期間中に受け取れなかった賃料とランニングコストの金額に相当する金額から決定される。

同様に当該補償請求権は、不動産所有者に、賃借人が立ち退き処分や強制退去の対象不動産に入居する前に、該当する不動産について売り出し又は賃貸借のオファーを行なっており、立ち退き処分の停止によって経済的損失を被ったことを証明することができる場合に対しても、権利の行使が認められている。補償金の金額や補償金の申請期間は賃貸人の場合と同一とされている。

 

 

マデロ・ハイメ (Jaime Madero)

ヴィラ法律事務所

 

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2021年1月15日