「トークン」とは、ブロックチェーン技術で作成されたで、あらゆる性質の(有形又は無形の)商品、サービス、または権利を表すデジタル表現であると理解する。資産という側面に焦点を当てる場合、「トークン」の概念を有形財、そしてその中の不動産に投影することができる。

したがって、所有権か占有権かにかかわらず、不動産が有する物権をトークン自体に取り込むことは本質的に可能である。実際、ブロックチェーン技術に基づく技術プラットフォームが存在し、不動産の物権のトークン化が可能であるいくつかの法域では、現実となっている。そこでは、公証人や公的機関の介入なしに、不動産の獲得や、ダイナミックかつオープンな交換を可能な場を提供している。トークンの保有は、所有者表現だけではなく、トークンに内在する特定の使用権の表現でもあり、従来の不動産権利書と同様の役割を果たす。したがって登記可能な権原となる可能性がある。

しかしながら、前述のような扱いが現行のスペイン法上に適合しているとの疑念が湧く。不動産登記は、不動産の所有権やその他の権利に関連する行為や契約を登記し、記載することを目的とする。スペイン民法第606条、そして不動産担保法第2条第1、2及び6項は「所有権」に言及し、土地登記簿への登記または記載を義務付けている。登記のためには、不動産担保法は、所有権が公的証書、執行証書、または公認の機関が発行した真正文書に託されていることを要求する。

上記を鑑みると、トークンは物権を表すことができると推定されるが、トークンによるデジタル表現が不動産担保法でいう「文書」であると厳密に判断されない限り、これを根拠に不動産登記簿にアクセスすることはできないことになる。スペイン王立言語アカデミー編の辞書によると「文書」は、紙媒体の書面であると定義する。つまり所有権は、権限ある当局によって認可された文書を指し、その有効印は、署名または押印といった形で文書に記録されることになる。トークンはコンピュータ言語による表現であるため、通常の言語への直接的な翻訳が想定されておらず、中央集権的な権威が介在しない。不動産担保法第 5 条にて言及される当局は、分散型レジストリの純粋な技術に基づくトークン の真正性を管理する当局とは一致しない。したがって、従来の所有権と暗号化された所有権の差異を考慮すると、抽象的な意味での「所有」の概念は、物権の証拠として後者に適用され得るが、スペイン民法および不動産担保法に従って登記可能な「所有」には適用できないと結論づけることができる。

ブロックチェーン技術は、その性質上、追跡可能かつ変更不可能なトークンの形で物権を暗号的に表現することを可能にするが、それらは、物権を内包するものとして法律上認められているわけではない。このため、最終的に不動産の所有権を特定の単位に分割したトークンを発行する場合(トークン化)でも、次の2つの問題に直面する可能性がある。

a) 文書表現方法はどのようにするのか、所有権もしくは物権の証拠となるのは何であるか?技術的な側面では、トークンは所有権そのものであり、トークンへのアクセスコードで構成される特権的・排他的アクセスシステムを通じて所有者を特定することに問題はないであろう。

b) 不動産担保法第1 条に定める第三者に対する効力を有するためには、トークン化された 物権はどのように公表されるのか?

b)の疑問を現行の法制度で判断すると、不動産登記所にてトークンを登記できる可能性は否定せねばならない。ただし、トークンの登記簿へのアクセスを可能にするために、トークンの作成で行われた技術的変革が、同様に物権の登記を保管する機関(不動産登記所)に移転される場合は例外となる。(ただしこれは、先験的に、集中化に対抗する分配という要素によって特徴づけられるブロックチェーンの性質に矛盾する解決策と言える。)加えて、実現のためには、管轄当局による直接的または間接的な認証手段を要し、それはブロックチェーンへの介入を意味する。問題は、民法や不動産担保法においては不動産権利書が当局、すなわち所有権当事者以外の外部の者によって検証されることにより有効性と意義を与えているが、トークンでは、権利の暗号性自体にこれを内包するため、その有効性と信憑性のために特定の当局からの検証を必要としないという根本的な差異にある。

要するに、トークンは、不動産担保法に定める登記可能な物権となるための形式的特性を有さないと言える。しかし、このことは、公証人もしくはその他の公的代理人によって認証された文書に見られる、法律が要求する真実性と真正性の特徴が、まさにその技術にあることから、客観的には、不動産所有権またはその他の物権の対象であることを妨げるものではないと考えられる。 しかしながら、これらの所有権は第三者に主張することはできず、土地登記簿にアクセスできないため、登記から得られる保護特権を享受することもできない。

 

 

ヴィラ・エドアルド (Eduardo Vilá)

ヴィラ法律事務所

 

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2022年2月18日