2020年12月15日スペイン内閣は司法サービスの手続き効率化措置にかかる法案を承認した。この法案は司法行政におけるCovid-19対策として生まれたものだが、感染症が収束した後も継続される使命を有している。
本法案は以下の3つの柱から構成されている。
(a) 適切な論争解決手段(MASC)の導入、
(b) 手続き法の改正、
(c) デジタル化に向けた手続きの改正
最初の柱は、MASCの導入であり、これは裁判を避けながら、単に官僚的な手続きになることなく、当事者間の交渉による解決を促進することを目的としている。これらのメカニズムは民事及び商事手続きにおいて実施がされ、手続き上の要件として、司法手続きに先立ち交渉による解決の試みがされたことを証明する文書を、全ての申し立てに添付することが求められる。それらのいくつかは以下のとおりである。: 調停、和解、交渉担当者による者、拘束力のある申し出、独立した専門家による意見書、その他スペイン法制(例えば消費者法)において予定されるメカニズム。MASCにより合意に至った場合、当該合意は判決と同等の価値を有し、公正証書化又は裁判所によって公認されている場合には、執行力を有する。目的は、4つの事件のうち少なくとも1つは裁判外の解決策にて終結し、司法行政の負担を軽減することである。
第2の柱は、口頭判決の強化、口頭弁論の期間の拡張(手続き件数及び取り扱い範囲の拡大)、一般的な契約に関する新たな手続きの制定、及び民事訴訟における上訴の改正を目的とした手続き法の改革である
第3の柱は、デジタル化であり、裁判所への出頭を回避し、書類の処理を迅速化することを目的としている。本人確認及び認証システムの規制、テレビ会議による審問及び申し立ての一般化、apud-actaと呼ばれる委任状電子登録簿の構築を推進している。同様に、司法評議会は、スペイン法第230条の規定を発展させる過程で、手続き分野での指示の仕方について、電磁的方法を導入するための推奨事項を含んだ以下の手引書を作成した。(i) 手続き上の保証を侵害しない; (ii) 審問の開催や電磁的宣言の基準が裁判官の意図のみに依存することを避ける; (iii) 他の分野の経験を取り入れる(例えば国際仲裁)。司法評議会が設定した課題は; (i) 例外的な現状が集結した後を見越した制度を実施及び一般化すること、(ii)手続き上の保証を常に維持すること、(iii) 自治体レベルでの統一的な制度とすること。
司法レベルでは、例えば、行政訴訟と民事及び商事訴訟とでは異なる見解が存在する。
多くの場合において証拠が文書で提出される行政訴訟においては、それは高く評価されている。サンタンデール行政裁判所第2法廷はCovid-19パンデミックの結果として電磁的方法が導入され、本日において裁判の80%以上が電磁的方法によって行われている。手続き上の保証について、同裁判所は以下の方法でそれを維持することに成功した。
- 秘密保持については、録音は当該手続きシステム内においてのみ登録されるという方法によって保証がされる。
- 公開の原則が確立され、事前に各出席者の要求と身元確認を行い、オンラインセッションへのアクセスを認められている。
- 当事者主義及び防御権の原則も保証され、大半の証拠が文書である限り、両当事者は対等な立場にあり、証人や専門家のための仮想待合室を設定することもできる特別な手続き管理ツールを使用することができる方法が提供される。
同裁判所は、弁護士や裁判手続き代理人がアクセス可能な電子裁判アジェンダの導入をしており、それらの不要な出張を回避することに資している。また、データフローシステム及びガイド付き処理システムを備えており、全ての案件をより迅速に処理することができ、それら事件は完全な電子処理案件になろうとしている。
民事及び商事訴訟においては、一般的に裁判官が大きな権限を留保しており、特に証人や専門家による宣誓が含まれるような複雑な手続きにおいては顕著である。バルセロナ県裁判所第15法廷においては2020年3月からオンラインによる事件管理及びオンライン審議が導入され、3-5ヶ月の手続きの遅延を回避することができた。遠隔措置は、特に消費者訴訟、破産管財人との手続き、または簡易事前審問には、非常に有効で効果的であると考えているが、複雑な手続き(特に家族法や刑法にかかる訴訟で弱者が存在する場合)には、手続き法における保証が弱まると考えている(例えば、マスクで顔を覆った人物による警察署での刑事の宣誓等)。したがい、(i) 基準を統一し、防御の機会の喪失や不安定さを生み出す可能性のある機能不全を回避すること、(ii) あらゆる手続き法における保証を維持すること(特に専門家及び証人の宣言が行われるような場合は、証拠が採取される場所に独立した弁護士が立会う等、追加の予防措置を講じて実施すべきである)ができるのであれば、民事・商事裁判官は、電磁的方法による訴訟手続きについては肯定的であり、今後も継続可能であると考えている。しかしながら、その実施と一般化には、現在行われているものよりもはるかに大きな技術投資とセキュリティ対策が必要となる。
ボスク・ミレイア (Mireia Bosch)
ヴィラ法律事務所
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2020年12月18日