I. 序文

スペイン最高裁判所は2018年9月26日付直近の判決にて、契約内で毎月又は毎年の賃借料が定められているかに応じて、賃借人による新契約の放棄の効果をもたらす結果を伴う賃貸借契約の黙示の更新が毎月又は毎年行われると理解されるべきかどうかについての見解を示した。

 

II. 本件の経緯及び適用法令

前提となる事実は、2009年に店舗賃貸借契約が終了したにもかかわらず、黙示的更新がされていたおかげで、賃借人側から一方的に契約破棄をするまで店舗を経営し続けたことに始まる。

スペイン民法第1566条及び第1581条の両条項を合わせて解釈すると、契約終了後も賃借人が賃貸人の同意のもとに15日以上賃貸物件の占有を継続した場合、黙示的な更新がなされたとみなされ、先に期間について同意がない場合は、契約上の固定賃料が年額表示であれば年毎に、月額表示であれば月毎に、日払い表示であれば日毎に黙示的に更新されると理解される。

本件に関し最高裁判所判決は、「民法第1566条にある黙示的更新とは、実際には契約の両当事者の黙示の合意による新規賃貸借契約締結とみなすことができる。現行の賃貸借契約が終了した後も賃貸物を享受するために15日間以上保留し続けることにより、そこに合意が発生すると理解されるもので、賃貸借契約の終了から前述の15日間が経過しているにもかかわらず、賃貸人が、所有する賃貸物件の返却を賃借人に請求しなかったことにより、賃貸人も合意したとみなされる」とした。

また、1994年11月24日付「都市部賃貸借に関する法律」第29号第11条には、「賃借人は賃貸借契約開始後少なくとも6か月の期間が経過した後、30日以上前に賃貸人に通知をすることで、中途解約をすることができる」という規定が存在する。

本件では賃貸人は、上記規定にある6カ月の経過要件を満たしていないとして、当該6カ月に相当する賃料を賃借人に対し請求していた。

これに対し賃借人は、本件の元となる賃貸借契約は2009年の時点で終了しており、契約上は年間賃貸料で契約があったものの、月払いでの賃料支払いがあったことの事実により、月毎の自動更新が行われている状態にあったと反論していた。

 

III. 判決

地方高等裁判所レベルでは、当該論点に関し統一した見解を示していなかった。ある裁判所は、更新の目安を実際の賃料の支払い頻度に求め、他の裁判所は、最高裁判所がとった立場と同様に、黙示的更新によって締結されたとみなす新規契約の期間を全体的な賃料の期間と規定する方針に沿う。最高裁判所判決は「年額賃料の支払いが月払いで行われていたことを理由に契約期間も月毎更新とみなすことは論拠に欠け、契約書においてあえて賃料を年額で規定することの意義を失うこととなる」とした。

 

IV. 実務的結論

結論として本最高裁判決は、賃貸借契約が終了してからも賃貸物件を引き続き占拠する場合賃借人は、契約書の賃貸料が年額で固定されている場合には、元の賃貸借契約が年毎に黙示的に更新されると理解し、新規に有効期間一年の契約が開始した時点から最初の6ヶ月は契約を放棄できず、放棄の際も、最低30日前には通知することが要件となることに留意すべきである。

不動産オーナー/賃貸人には、本最高裁判決により、賃貸借契約の賃貸料が年額で固定されている場合は、元の賃貸契約が年毎に黙示的に更新されると理解し、新規に有効期間一年の契約が開始した時点から最初の6ヶ月の間に賃借人側からの契約解除があった場合は、相応する賃貸料を請求することが可能となったと言える。

 

 

ヴィシャビセンシオ・カルラ (Carla Villavicencio)

ヴィラ法律事務所

 

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2018年10月19日