仲裁人は裁判権に準じた機能を果たす。つまり、仲裁人は、意見の相違を仲裁で解決することに同意した両当事者間に生じる紛争について、最終的に決定を言い渡す権限を有している。しかし、その任期は仲裁判断(裁判所の判決に相応する決定)を下すことにより終了するため、当時者が自主的に仲裁判断を遵守しない場合には、執行権限を有する裁判官によって当該仲裁判断が執行されることとなる。
以下では、スペインにおける国際仲裁判断(スペイン国外で言い渡された仲裁判断)の執行申立ての手続きについて述べたい。
適用法令
2003年12月23日付法第60/2003号(スペイン仲裁法)第46条にしたがい、ニューヨークにて1958年6月10日に作成され、現在156か国が加盟している外国仲裁判断の承認及び執行に関する条約(“CNY 1958”) 及びスペイン民事訴訟法で定められる海外の裁判所による判決の執行申立て手続きについて確認する必要がある。
2015年8月20日より、2015年7月30日付法第29/2015号民事事件における国際的な司法協力に関する法律(“LCJI”) の第五章が、海外にて仲裁判断が下された日に関係なく、スペインの裁判所に提出される海外の仲裁判断の執行申立ての時に適用されることとなった。
なおLJCIが施行されるまで使用されていた、1881年民事訴訟法(2000年1月7日付法第1/2000号民事訴訟法によって既に部分的に廃止されていた)の第951条から第958 条まで(スペインにおける外国判決の有効性を定める条文)は廃止された。
外国判決の執行手続き
LCJI第5章は、外国判決の執行手続きを特別な手続きとして維持し、 (a)債務名義すなわち、外国判決の承認の宣言と、(b)該当する場合には執行の認可の2段階に手続きを分けている。
しかしながら、外国仲裁判断の執行及び承認の特異性については考慮されていないため、 CNY1958、特に第4条及び第5条と仲裁法、そして民事訴訟法も同時に参照しなければならない。
I. 外国仲裁判断の承認・執行を行う管轄機関
2011年6月より、スペイン仲裁法第8条第6項の定めるところにより、以下の管轄機関において外国仲裁判断の承認・執行が可能となった。
a) 外国仲裁判断の承認は、各自治州高等裁判所の民事法廷または刑事法廷にて行う。
b) 外国仲裁判断の執行は、第一審裁判所にて行う。
II. 外国仲裁判断の承認・執行申立て
LCJI第54条は、外国仲裁判断の執行にあたって、有効としたい外国仲裁判断の両当事者または一方当事者に対して法的な利害関係があることを証明したものによる申立てにより、外国仲裁判断の執行手続きを開始することができると規定している。
当該申立ては、民事訴訟法第399条の申立て及びその内容に関する要件- 原告・被告の特定、法的根拠・事実の説明及び弁論の表明–を満たす必要がある。
また、両当事者は裁判所事務代理人によって事務手続きが代理され、裁判においては弁護士によって代理されなければならない。
III. 申立て時に必要となる書類
CNY 1958第4条には、外国判決の承認お及び執行申立て時に申立て書と併せて提出を行う書類について、以下のように規定されている。
a) 仲裁判断の原本書類及び当該書類の真正な写しであることを示すための要件を備えたコピー1部
b) 仲裁合意に関する原本書類及び当該書類の真正な写しであることを示すための要件を備えたコピー1部
さらに、仲裁判断もしくは仲裁合意に関する書類がスペイン語(もしくは各自治州の公用語)で作成されていない場合、外国仲裁判断の承認及び執行の申立人がそれら書類の翻訳を提出しなければならない。
IV. 海外仲裁判断執行手続きの申立て期間
海外仲裁判断執行手続きの申立て期間は、仲裁判断書が発行されてから5年以内である。
V. 不服申立て及び決定
申立て及び提出書類は裁判所によって検討され、許可され次第被告側に通知され、30日間の不服申立て期間が与えられる。不服が申立てられた場合でもそうでない場合でも、上記期間が終了したのち、裁判所は決定を下すこととなる。
ビシャビセンシオ・カルラ (Carla Villavicencio)
ヴィラ法律事務所
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2015年12月11日