株主による供与(以下「株主供与」という)は、スペイン企業会計原則(Plan General Contable)第118項目に該当し、近年、特に非公開会社や同族会社が、損失のカバー、バランスシートの調整、もしくは特定の投資へ短期間対応のために、自己資金への資本注入を必要とする法人によって広く使用されているメカニズムである。これらの出資は、実質的には、株主が「回収不可能」であることを理解して供与する(金銭的・非金銭的性質な)資産であり、他の勘定科目に該当しない取引により会社による商品、または役務の提供の対価を構成せず、負債としての性質も有さない。本出資は、公的証書の作成もしくは商業登記所への登記を要さないため、その簡便さ及び費用削減の側面から、これまでの出資(会社資本として登記可能で、スペイン会社法第58条以降に定める株式または出資持分の発行と対をなすもの)に代わる興味深いものである。
株主供与は株主資本の部で純資産として認識され、返還請求の権利を有することなく供与される。当株主供与は、会社に対する株主の債権を構成せず、この取引に関する法整備が(企業会計原則に定めるのみで、)整っていないことから、当該供与が、株主への返還もしくは弁済対象となるのか、また、対象とする場合、返還のために満たす必要のある要件について、会社は常に疑問を有してきた。当該問題については、2017年10月17日付パルマ・デ・マジョルカ商事裁判所第429/2017号判決を参照されたい。同判決は、現行の企業会計原則システム発効以前は、第118項目は、唯一、損失、または「赤字」相殺を目的に使用されることを想定していたことを立証した。しかしながら、このような適用方法は拡大され、現行の企業会計原則の定義で(「供与金額の会計処理を可能とするために」)定められているように、株主供与の使途は、現在、上記以外のものであってもよいとされている。
2016年5月9日付スペイン国税庁法人課税部門諮問書第V1978-16号によると、株主供与の再統合は、法定準備金(利益または株主供与金に由来する)の取崩しに対する株主の抽象的な権利に相当し、商業上の規則で当該目的のために確立された条件および要件の下で合意される。上記を念頭に置いた上で、株主供与に対応する準備金の取崩しは、株式プレミアムの分配と類似の性質を有するため、同様に扱われなければならない。株式プレミアムの分配は、利益の分配と同じ制限を受ける。同様の意味において、前述の判決は、「当該勘定『第118項目』の分配は、利用可能な準備金の分配と同様であり、利益の分配について商業分野にて定める一般的規則、制限に従うものと理解できる」と述べている。しかしながら、利益の分配に適用される法令上の制限が、株主供与の返還にも適用されるとは思われない。利益分配の制限は、スペイン資本会社法第273条、第274条、第326条に規定されており、以下の通りである。
(i) 会社の純資産価値が、株式資本額を下回ってはならない。または利益分配の結果、株式資本額を下回ることになってもならない。
(ii) 過年度の損失のために、会社の資産価値が株式資本を下回る場合、これらの損失を相殺するために利益を使用しなければならない。
(iii)株式資本の最低20%に達するまで、法定準備金は、該当年度の利益額の10%に相当する金額が計上されていなければならない。
(iv) 資産として表示されている研究開発費をカバーするのに十分な使途不指定の準備金が用意なされていなければならない。
利益準備金、もしくは使途不指定の準備金の不足は、会社が供与資産を株主に返還することを妨げるものではない、と考える。また、会社に法定準備金の十分な用意がないという事実が、供与資産の返還を妨げることもない。なぜなら、法定準備金は、準備金(もしくは株主供与資産)からではなく、その年度の利益から用意されなければならないためである。再統合の結果、純資産額が株式資本額を下回らない限り、資本の不均衡を生じるリスクはないため、株主総会にてこれに呼応する決議の採択を条件に、このオペレーションの実施を可能にする。
ルビオ・ジョアン・ルイス (Joan Lluís Rubio)
ヴィラ法律事務所
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2024年4月19日