直近において、スペイン政府は、商事会社の組織変更の透明性を高めることを目的とした勅令法第5/2023号を承認した。同時に、ウクライナ戦争への対応とラ・パルマ島への支援措置の延長を決定した。
当該勅令法は、EU域内における国境を越えた組織変更、合併及び分割に関するEU指令第2017/1132号を改正した2019年11月27日付EU指令第2019/2121号を国内法に置換するもので、EUが定める会社の権利と透明性の目的の調和計画に準拠する。
今回の国内法化するにあったては、欧州連合機能に関する条約第49条 設立の自由に対する制限の禁止、及び第54条 欧州規制の適用の統一の規定に準拠することが必要であった。また、EU域内の市場の機能を向上のため、域内の流動性を促進することも目的としていた。
今回の規制のもうひとつの目的は、組織変更時の行為の法的分析の簡素化にあり、それによって社会的対話を促進し、当該オペレーションにおけるすべての利害関係者の権利をより尊重することにある。
オペレーションの透明性を高める目的で、会社の組織変更が開始される前にその会社の債権者、株主や従業員が、オペレーションの詳細を認知できるような複数の措置が導入された。取締役らは、株主、従業員に対し、組織変更の内容とそれにより彼ら及び債権者、そして会社にもたらされる結果を説明、正当化するような報告書を作成する義務を有するとした。
株主向け報告書には、別途、組織変更計画における実際の補償提案、株式・出資持分の変換後の種類、組織変更後の組織図、CSRへの影響、株主が有する権利と救済措置についての説明セクションが含まれていなければならない。
従業員向け報告書には、別途、オペレーションの結果として生じうる労使関係、雇用条件の重大な変更、子会社への影響に関する説明セクションが含まれている必要がある。
組織変更合意の予備的通知に関する措置として、オペレーションに参加する会社の取締役らには、組織変更決議を承認する株主総会開催日の少なくとも1カ月前までに、会社のウェブサイトに、組織変更の計画書、株主、従業員、債権者、従業員代表への告示、又は計画に対する意見を記載した従業員への告示、及び場合によっては、独立した専門家の報告書を、掲載する義務がある。
国内法化実施にあたり、EU域内において国内外の構造的変更に関するすべての制度が、単一の規制枠組みに統合された。これは、EU域内にて規制枠組みに相違があることにより、組織変更時により有利な規制を探求することを可能にするよう事態を回避するためである。