2022年2月17日付スペイン官報にて、2022年1月31日付法的安全・公文書管理局(以下「公文書管理局」という。)決定が公示された。当該決定は、ある株式会社(S.A.)の株主総会決議にかかる公正証書の登記申請を、トレド商業登記所登記官が株主総会招集手続きに瑕疵があるとして却下したことに関するものである。

本事案において、当該会社の株主総会は取締役全員の任期が満了した状態で招集がされた。他方で、株主の一人から職権による株主総会招集の申請が同商業登記所に提出されたため、商業登記官は株主総会招集を行なった。なお、当該職権招集は会社取締役により招集された株主総会よりも後日に行われた。本事案で問題となっている株主総会において採決された内容には、経営組織を修正するための定款変更が含まれていた。

商業登記官は、以下の2つの理由に基づき、本件公正証書の登記を拒否した。

1) 資本会社法第171条の規定に基づき商業登記官により招集された株主総会の開催が保留状態のため、文書の認定をすることが認められない

2) 当該株主総会招集を行なった取締役の任期が7年以上も前に満了している

この商業登記官の判断について、会社側は以下2点を主張し、異議申し立てが提起された。

1) 会社経営組織が決定した以前の招集通知のため、商業登記官が招集した株主総会開催の目的が欠如している。

2) 任期満了によって生じた無秩序状態を正常化するための株主総会招集のために、任期切れ取締役の権限が存続する。

公文書管理局は、本件異議申し立てについて、1点目の却下理由については異議を認めたが、2点目の却下理由については、異議申し立てを退け、登記官の判断を支持した。その理由は以下のとおりである。

議案の内容が同一であったとしても、将来的に商業登記官により職権招集された株主総会の開催が控えていることを理由にある会社の株主総会が採決した会社の決定の評価を一時停止することを求めるような規則も判例又は行政的決定により確立された原則も存在しない。株主総会の招集を行う経営組織または公的機関に応じてある株主総会が他の株主総会よりも優先されるということではなく、優先順位の原則に基づく時系列によることができないのであれば、総会の日時調整を行う管轄、公告要件の履行、及び採決された会社決議の有効性に配慮し決定されなければならない。

取締役の任期満了に関して、最高裁は例外的に以下の条件を満たす場合に、任期満了した取締役により招集された株主総会の有効性を認めている。

「ただし、例外として、会社の保全と会社及び市場の安定性の原則のために、企業が麻痺状態そして最終的に解散となってしまうことを防ぐために、経営組織が無秩序状態となった場合、200775日付判決で「画一的な無効は会社の法的安全性に混乱をもたらす可能性がある」と述べられているように、実質的な理由により、任期満了となっている事実上の取締役に対して会社経営組織を正常化させるための株主総会を招集する権限を認める。」

資本会社法第171条第2項では、取締役会に欠員がある状態で在任中の取締役により行われる株主総会の招集は、欠員を埋めるための取締役選任を行うことのみを目的とすることができるとする。しかしながら、近時の公文書管理局の決定2020年10月22日付及び同年11月12日付決定では、欠員を補充せずに経営組織の変更(共同取締役から一人取締役に変更)し、株主総会の招集者である共同取締役の一人を一人取締役として選任することを目的とした、株主総会の招集を認めた。いずれの事案も、合同会社(Sociedad limitada)の事案であり、その会社定款において経営組織の態様につき複数の可能性が制定されており(合同会社法第210条第3項)、経営組織の変更のための定款変更の必要はなかった。

本事案については、問題となっている会社は株式会社(Sociedad Ánonima)であり、会社の経営組織変更(取締役会設置会社から一人取締役への変更)には定款の変更を行わなければならず、これは資本会社法第171条第2項の定める範囲を超えることから、当該株主総会を招集した任期満了の取締役は定款変更議案を議案の内容に含める権限に欠ける。

この決定について、株式会社の場合、取締役全員が任期満了状態で株主総会が招集される場合には、会社の決議は会社経営体の無秩序状態を正常化するための取締役の欠員を補充する取締役選任のみを行うべきであり、必要であれば、その後、新たに株主総会を招集し、経営組織を変更するための定款変更を行わなければならないと理解できる。

 

ヴィラ法律事務所

 

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2022年2月25日