2022年6月30日、スペイン下院は会社設立・成長に関する法(「Crea y Crece法」)の草案を承認した。当該法律は、新設法人の創出を促進し、新規設立会社が成長時に直面する障害を軽減することを目的としている。このため、Crea y Crece法には、会社設立プロセスの迅速化、ビジネス入金遅延の軽減、経済活動上の法的障害の排除、代替資金調達手段の促進などの措置が盛り込まれている。
Crea y Crece法第2章には、新規設立促進策に関する2つの重要な方針が定められた。
I. 有限会社設立時の最低資本金額を1ユーロに減額
- スペイン資本会社法の連結テキスト第4条を改正し、有限責任会社設立のための最低資本金額が3,000ユーロから1ユーロに引き下げられる。このように、スペインも、米国、日本、中国、英国、フランス、ポルトガル、イタリア等、有限責任会社設立時に資本金の下限設定がない国々の例に倣うことになる。
しかし、Crea y Crece法では、有限会社の資本金が3,000ユーロ未満である場合は、法定準備金と資本金の合計が3,000ユーロに達するまで、利益額の20%以上を積立てなければならないと定めている。
また、会社の清算時に、会社の資産が債務額に達しない場合、出資者らは、共同出資した株式資本の金額と3,000ユーロとの差額について、連帯して責任を追うことを義務付けた。
- スペイン資本会社法第4条補足条項が削除され、「formación sucesiva」 (連結設立)という会社形態が廃止された。
II. オンライン会社設立
- Crea y Crece法では、迅速かつ機動的に、かつ可能な限り低コストな会社設立を促進するため、電子処理システムであるCentro de Información y Red de Creación de Empresas(CIRCE/会社設立情報センター)及び、単一電子文書 Documento Único Electrónico(DUE)の利用を促進する措置を盛り込んだ。当該措置により、会社設立はすべてオンライン上で実行可能となり、設立にかかる時間とコストが大幅に削減され、有限会社であっても標準化された手段を用いれば24時間以内に設立することが可能となる。(Crea y Crece法第5条2項)
その他の措置として、有限責任会社や協同組合設立にアドバイス・参加する公証人や他の仲介者は、起業家サービス局(Puntos de Atención al Emprendedor – PAE)やCIRCEを利用するメリットを新規設立者に伝えることが義務付けられている点が注目に値する。
同様に、公証人は、電子公証人名簿(la Agenda Electrónica Notarial)の利用を義務づけられ、CIRCEを通じて会社設立を行うことを可能としなければならないとされた。そして、当該システムを通じて開始された会社設立手続きを拒否することができないとした。
上記にかかわらず、会社法の分野におけるデジタルツール及びプロセスの使用に関する2019年6月20日付EU指令第2019/1151号のスペイン法への置き換えまでは、CIRCEの改革は完了しない。国内法が整備されて初めて、CIRCEを通じたオンライン上の会社設立が完全に可能となる。
ルビオ・ジョアン・ルイス (Joan Lluís Rubio)
ヴィラ法律事務所
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2022年9月16日