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ここ数年のテクノロジーの進化は、コミュニケーション方法を根底から変え、それに伴い、法的手続きにおける証拠収集とその評価方法にも大きな変化が生じた。WhatsApp、電子メール、電子署名のようなツールは当初は文書管理や個人・職業上の関係の効率化を目的としていたが、現在では訴訟、内部調査、監査等において主要な役割を果たしている。しかしながら、我々はここで、これらのツールが本当に表層通りの法的安全性を提供するのか、人工知能(AI)によるメッセージ編集だけでなく、会話のシミュレーションやデジタルIDの複製さえ可能である状況下で、その利用に伴う課題に対応できる準備ができているのかを、考える必要があろう。

電子メールからWhatsApp

当該課題は、スペインの裁判所が電子メールの証拠能力の認可の難しさに直面した一昔前を思い起こさせる。その際の主な争点は、送信者の真偽性、書類の信憑性、改ざんの有無(真正性)を証明することにあった。通常のプロトコルでは、電子メールの真正性と発信元を証明するコンピュータ鑑定が事前、もしくは異議申し立て後に必要であるとしていた。

同様の議論が今日WhatsAppメッセージについても再燃している。画面のスクリーンショットをし、法的手続きに証拠提出する容易さは、会話の偽造手法の高度化と対をなす。しかしながら、(技術的、法定手続き上の保証の強化措置など)予想とは逆に、最高裁判所は最近、要件を緩和する傾向にある。つまり、具体的な異議申立てがない場合、メッセージは真正性を示すとみなし、改ざんや虚偽の立証責任は当事者に課せられる。

根本的な問題は、何年も前に電子メールで直面した、技術的検証の欠如、追跡の困難性、コンテンツの改ざん問題 が、インスタントメッセージャーでも依然として存在しており、さらに「ディープフェイク」や音声生成ツールが急増していることで、より深刻化していることである。情報の見せかけの信憑性は、情報の真正性を保証する厳格な規制の必要性に対する代替にはならない。

電子署名: 解決策、または新たな問題の種?

WhatsAppやその他類似アプリの普及と並行した、電子署名の普及は、電子文書の真正性および受領否認不可性の問題を一挙に解決すると期待されていた。発行認証機関によって発行された高度な電子署名は、一見、電子文書を改ざんやなりすましから保護すべきものである。しかし、企業や事務所などの実際の現場では、実効的な内部プロトコルなしのテクノロジーは、従来のやり方と同様に脆弱になり得ることがわかってきている。許可されていない従業員による証明書の発行、パスワードの共有、アクセスや使用の記録不足といった頻繁に発生するミスは、電子署名の有効性と追跡可能性を損なう要因となる。

この状況を他の国際的なモデルケースと比較することは、我々の課題を見直すことにつながる。日本では、電子署名よりも、従来の方法である「判子」(私印)を使用することが日常生活や法的手続きにおいて依然主流である。社会が、個人によって直接管理できる有形のシステムに信頼を置いているためである。

人工知能: テクノロジーが証拠リスクを増大させる時

想像を絶するほどリアルで精巧に模倣したメッセージやメール、音声、画像を作成できる人工知能システムの登場は、電子証拠に求められる信頼性の閾値をどこに設定すべきかという議論を再燃させている。直近の判決や、欧州連合における「AI法」の発効においては、デジタル証拠は常に人間の検証、監査、追跡可能性のメカニズムの対象となるべきであると強調している。そうして初めて、自動化された決定や不透明なアルゴリズムによって生成された証拠に対して、無罪の推定が保護され、効果的な司法保護が尊重されるのである。

実践的な推奨事項

デジタル証拠の採用における過度な柔軟性に伴うリスクに晒されないためには、法律事務所や企業が是正措置と予防措置を講じることが不可欠である。

  • 電子署名の使用および保管に関する厳格な内部プロトコルの実施
  • 正当性に疑いがある場合は常に、電子メールおよびデジタル通信に関する情報技術専門家の鑑定を要求する。
  • 電子署名一連の保管記録を含むメタデータ、アクセスログ、及びオリジナル文書の保存を徹底する。
  • デジタル処理に関する定期的な監査の実施、また、AIおよび証拠の自動化に関連するリスクについて職員に法的研修を実施する。

法的保証サービスに対するテクノロジー

通信や手続きの管理において、デジタル変容の速度と利便性は増すばかりであるが、見せかけの真正性は客観的な法的保証の必要性へと置き換えられるべきではないという根本を忘れてはならない。WhatsAppのメッセージ、電子メール、電子署名は、法に基づく統治国家に相応しく真正性と追跡履歴の厳格なコントロール下に置かれるべきである。10年前と同様に、自動化システムによる操作、なりすまし、またはエラーなどから当事者を真に保護する強化された予防措置を要求すべきである。

そうして初めてテクノロジーは法的安全性と正義の確保に寄与する存在となる。

 

 

シャミン・ハニフ (Shameem Hanif)

ヴィラ法律事務所

 

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2025年8月29日