ほぼ誰の気に留められることなく、クリスマス直前の2015年12月23日、欧州議会及び欧州評議会指令第2436/2015号がEU官報(Diario Oficial de la Unión Europea)にて公示された。この指令(以下「商標に関する新指令」という。)はEU加盟国における商標に関する法令へのアプローチであり、廃止されることとなる既存の指令(EU指令第2008/95号)を一部修正しつつ改訂するものである。

商標に関する新指令の主たる目的のいくつかは(i) 共通商標システムにおいて存在する相違点を減らすこと(ii) インターネット時代への商標システムの適合及び(iii) 競争力と成長に寄与するようなより幅広い調和をもたらすこと。

主な改正点は以下の内容である。

1.登録条件の統一化

商標を構成することができる標章例のリストを作成しなければならない。この点において、標章の明確かつ正確な表示をするため、今後は、一般的に使用可能なテクノロジーを使って適切と考えられるあらゆる様式で標章を表示することが認められることとなり、図表によって表示する必要はなくなる。

さらに、商標の登録却下事由、または、特異性の欠如を含む商標の固有性に関する無効事由は、詳細に列挙されなければならない。このため、新指令は欧州規則第207/2009号において用いられている地域指示に関する規定を含んでいる。

2.保証商標(marca de garantía)や証明商標(marca de certificación)の拡大及び団体商標(marcas colectivas)に関する規定

新指令は、いわゆる「保証商標(marcas de garantía)」や「証明商標(marcas de certificación)」および「団体商標(marcas colectivas)」に関する規定を拡充している。保証商標は、商標によって保護される商品やサービスについて技術関連の規定、品質に関する規定等の要件を充たしていることを証明するために、それらの権利者に対して使用が認められる。

他方、「団体商標(marcas colectivas)」は共通の仕様をもつ商品やサービスを促進するためのツールとして用いられる。したがい、国内の団体商標はEUの団体商標に適用される規定と類似した内容であることが適切と考えられる。この点において、団体商標は、すべての商標と同様に、権利者である団体の一員の商品またはサービスを他の企業の商品またはサービスと区別するために適切であると定義される。

3.偽造商標対策手段の拡大

商標に与えられる保護を強化し、WTOの枠組み、具体的には輸送の自由に関するGATT第V条に基づき、加盟国の国際的な義務に応じて偽造商標への対策をより効果的にするため、またジェネリック医薬品に関しては2001年11月14日にドーハでのWTO大臣級会合で承認された「TRIPS(知的所有権の貿易関連の側面に関する協定)及び公共衛生に関する宣言」に沿って、新指令は、商標権者にその商標が登録されている加盟国において、登録商標と同一である、または重要な要素において登録商標と同一であると認められる商標を用いた商品が第三国から輸入された場合には、当該加盟国で当該商品が通常の手続きで通関される前に、その流通を阻止する権利を与える。

4.国内機関とOHIM(欧州共同体商標意匠庁)との連携強化

上述した様々な分野と同様、商標実務と商標検査・登録に関するツールの統一化を目的として、各国内機関は相互に、またOHIMと効果的に提携することができる。

5.国内法令への反映期限

加盟国は新指令第3条乃至第6条、第8条乃至第14条、第16条乃至第18条、第22条乃至第39条、第41条、第43条乃至第50条を2019年1月14日までに国内の法律、規則及び必要な行政通達に反映させなければならない。

ただし、第45条については、2023年1月14日までとされる。

 

ヴィラ法律事務所

 

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2016年8月1日