2020年6月30日、欧州連合理事会はEUへの不要不急の渡航に関する一時的な規制及びその可能的な緩和についての勧告(以下「本勧告」)を採決した。EU加盟国の国家元首または政府首脳がすべてのEU外の国からEUへの不要不急の渡航に関する一時的な規制を導入することに同意がされた2020年3月17日以降、EUの対外的な国境は封鎖されていた。6月11日、欧州委員会は、2020年7月1日からEUへの不要不急の渡航にかかる制限を段階的に緩和していくためのアプローチを設ける通知を採決した。以降、加盟国は採用されるべき基準及び方法論について議論を重ねていた。

 

1. 渡航制限が解除される国のリスト及び緩和の基準

本勧告に定められた基準及び条件に従い、7月1日以降、加盟国は以下の国からの不要不急の渡航にかかる規制の解除を始めなければならない。

1)アルジェリア

2) オーストラリア

3) カナダ

4) ジョージア

5) 日本

6) モンテネグロ

7) モロッコ

8) ニュージーランド

9) ルワンダ

10) セルビア

11) 韓国

12) タイ

13) チュニジア

14) ウルグアイ

15) 中国(但し、措置の互恵性が確認されることを条件とする)

EUへの不要不急の渡航の規制を緩和すべき国をどのように決めるかは2020年6月11日付欧州委員会通知に定められているEUへの不要不急の渡航にかかる一時的規制適用の第3評価についての方法及び基準を適用すべきとされる。この基準は、経済的・社会的配慮のほか、疫学的状況及びソーシャルディスタンスを含む感染防止策を考慮し、累積的に適用される。

疫学的状況に関しては、上記リストに記載された国々は、特に以下の基準を満たさなければならない。

  • 2020年6月15日時点において、過去14日間における居住者100,000人あたりのCOVID-19の新規感染者数がEUの平均に近いか、それを下回ること
  • 上記と同じ期間における新規感染者数の傾向が、その前の14日間と比べて、安定又は下降していること。
  • 検査の実施、監視措置、連絡先の追跡、感染防止策、治療及び感染症例の報告の側面を含む入手可能な情報及び情報の信頼性を考慮した、COVID-19への包括的な対応がされていること。必要であれば国際保健規則(IHR)の合計平均スコアも参照する。また、上記側面について欧州連合代表部が提供した情報も考慮されなければならない。

また、国ごとに定期的に、互恵性の基準についても考慮することができる。

状況の変化とその結果としての疫学的状況にかかる評価の変化に応じて、既に上記リストに含まれている国について全部又は部分的に渡航制限が解除又は再導入される可能性がある。上記リストにある国の状況が急激に悪化した場合、迅速な意思決定がされなければならない。

渡航制限が継続する国々については、以下のカテゴリーに属する者は渡航制限の対象から除外される。

  • EU市民及びその家族
  • EU長期居住者及びその家族
  • 役職による渡航または必要不可欠な場合

EUへの不要不急の渡航にかかる一時的制限をある国の国民に適用するかの決定要因は、規制緩和対象国の居住者かどうかであり、当該国の国籍を有するかではない。

 

2. 今後の動き

本勧告は法的拘束力を有するものではない。各加盟国の監督機関は本勧告の内容を実施する責任を有する。加盟国は完全な透明性をもって、上記リストにある国に対する渡航制限を段階的に緩和することができる。

いずれの加盟国も、本勧告に従って制限解除の調整がされる前に、特定の国からEUへの不要不急の渡航にかかる制限の解除を決定してはならない。

制限が解除される国のリストは2週間ごとに見直しがされ、上記の基準に基づき包括的な評価が行われた後、欧州委員会及びEUの関連機関との緊密な協議の後、必要に応じて、欧州連合理事会によりアップデートがされる。

 

露木美加

ヴィラ法律事務所

 

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2020年7月3日