2016年5月25日欧州委員会はオンライン取引に関する新しい提案を発表した。本案はEU域内の商業及び公益事業の電子取引を迅速化し、企業と消費者に利便性を高めるための新基準を含むものである。

本案は、電子市場のプロジェクトを促進するべく以下の三つを主な焦点とする。

  1. 地理上の制約にとらわれず、オンライン取引を推進する
  2. 欧州域内の国際的な物資の輸送がより手頃で効果的であるようにする
  3. 消費者をより保護し、現行法令をより遵守することで信頼を獲得する

欧州委員会副委員長アンドゥルス・アンシップは、以下の言葉によって、誰でもアクセスできる開かれた欧州域内の電子取引市場を達成するにあたってこれまで存在していた問題点を表現している。

『送料が高すぎることや、トラブルがあった際に、クレームをつけられない場合を恐れて、インターネットでの特別価格の商品や他国からの買い物を断念せざるをえない状況がが過度に見受けられる。

消費者も企業も、商品やサービスをインターネット上で売買する機会を逃さないために、問題点を解決していきたいと願っている。』

地理上の制約

地理上の制約とは国籍や居住地による区別のことを言い、電子取引にとっては除去したい妨げである。

本案は、消費者がEU域内の他国で商品やサービスを購入したい時、付加価値税や公共の利益を守るといった場合を除いて、価格や売買の条件に違い生じないことを保証することを目的としている。

本規則では、企業側に法外なコストを強いることを避けるため、全EU 圏内への郵送を義務化することはしていない。同じ理由で、付加価値税閾値に達していない小規模の企業は、特定の規則の適用が除外される。

国際輸送

ヨーロッパ内での小包輸送、特に高額な商品の場合の問題点は、消費者も企業側も他国との売買をしないことである。

本規制は価格の透明性を高め、国境をまたぐ輸送サービスの監視強化を可能にする。

これによって消費者や小売販売業者には、配達先が地方都市であれ都市部であれ、より低い価格と再配送の選択肢が広がることになる。

ヨーロッパ内の送料の透明性が高まることで競争を刺激し、価格が自主規制されることが予想される。

本規制では送料の上限は設けられていない。欧州委員会は2019年にそれまでの成果を考察し、価格規制のために他の措置が必要かどうか判断する。

消費者の信頼の向上

本規則では、域内機関が消費者保護に関して協力を強めることを計画している。

消費者の権利をより効果的に行使するために、域内機関は各ウェブサイトが消費者の地理によって差別を設けていないか、また購入後の条件がEUの基準に反していないか確認することができる。また詐欺行為を犯しているウェブサイトに即時閉鎖命令を出す、ドメインの管理者や銀行に問題企業の責任者の身元確認のための情報を請求することも可能になる。

ヨーロッパ内で消費者の権利を侵害した場合、域内機関が協力して不正行為を阻止するための措置を講ずることができる。

司法・消費者・男女均等法委員のヴェラ・ジョウロヴァは以下のようにコメントしている。『消費者の権利を知らないため、また権利を行使することが難しいと思われているために、ヨーロッパではオンライン上の買い物に信頼を置かない人があまりにも多くいる。消費者が従来の店舗と同じように信頼感を持って、オンラインでの買い物をしてほしいと願う。関連機関は、消費者の権利を守るためと不正行為を阻止するために、必要な対策をとる。本日提出された新案は、オンライン上での消費者保護と企業側の法的安全のために重要なものだ。』

今回の措置は長年待望されていた重要な第一歩である。これまでは各国でも全欧州レベルでも、テクノロジーのもたらした革新に追いついていなかったが、今ではより法的に安全な規制へと前進した。新規則の制定は、自由で真の域内電子市場の形成へとつながるであろう。

 

 

ピナ・ポール (Pina Pohl)

ヴィラ法律事務所

 

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2016年8月12日