去る2016年2月2日、欧州委員会はストラスブールにおいてテロ組織への資金供給対策強化に向けたアクション・プランを発表した。これは現代のテロの脅威との戦いにおいて迅速かつ確実な対応を図る狙いがあり、現行EU法をベースに、資金の動きからテロリストの所在を把握する、資金及び資産の授受を妨げる、あるいはテロ組織の豊富な資金源を特定し解体することを目的としている。

2016年 7月5日、欧州委員会は上述のアクション・プランを実行に移すための提案を承認した。これが第一歩となり、マネーロンダリング対策を目的とした資金の透明化に関する規則を強化する形で進められることになった。

この提案の目的は、テロリズムへの資金提供を駆逐し、また企業や信託ファンドの実際の保有者を明らかにすることにある。

欧州委員会のフランツ・ティンマーマン第一副委員長によれば、これらの対策は「テロのような犯罪行為のために資金隠しを行う個人を各国で特定するために有効だ」とし、また「EUメンバー国は、企業や信託ファンドの実質的な所有者や、オンラインでの外貨取引、あるいは誰がプリペイドカードを利用しているのか、という極めて有益な情報を入手し共有することができるだろう」

テロ組織による資金調達と戦うことに加え、当提案は企業や信託ファンドに関する情報を公開することを定めており、脱税行為に対する大きな抑止効果も期待される。

テロ活動への資金供給を金融システムから締め出すという目的を完遂するため、以下に挙げる変更が提案されている。

まず、EUの金融情報チームの権限を拡げて連携を高める。加えてテロ組織による電子マネーを用いた資金調達のリスクに対抗するとともに、プリペイドカードのような匿名性のあるツールの利用の管理に乗り出す。

最終的にはテロの脅威が高い他国との協力体制を確立し、銀行に対してはこれらの国から流れ込む資金について、所定の手続きのもとに追加調査の実行を義務化する。これに先立ち、2016年7月14日にテロの脅威が高いとみなされる国名のリストが正式に採択される。政府間機関であるGAFI(マネーロンダリングに関する金融活動作業部会)の調査結果をベースとするこのリストの策定においては、対象国のマネーロンダリング及び対テロ資金規制のシステムの機能に問題があるか否かが評価基準となる。2015年5月20日のEU指令第4項に基づき、当該リストは年三回更新される。

これらの透明化に関する規定は、マネーロンダリング対策を定めた前出のEU指令第4項が導入した対策を強化するものである。これにより実質的な所有者の情報への公的機関によるアクセス及び記録の相互参照が可能となるほか、当局の入手できる情報の範囲が拡大されることから、企業及び一任運用の信託ファンドはより厳しく監視される。

総括すると、マネーロンダリング対策として透明性を向上させることにより、新たなツールを用いたテロ活動への資金供与や脱税行為の抑制を強化につながると言えるだろう。

 

 

ピナ・ポール (Pina Pohl)

ヴィラ法律事務所

 

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2016年7月15日