2018年7月25日欧州司法裁判所第3法廷は、ベルギー、アイルランド、ギリシャ及びポルトガルの4ヶ国において識別性を具備していたと示すことができなかったとして、Kit Kat 4本入りの三次元商標の登録を取り消した。当該商標は2006年にSociete des produits Nestlé, S.A.が登録したものである。

上記判決はその法的根拠を2009年2月26日付の欧州商号に関する欧州評議会規則第207/2009号の第7条第1項、2項及び3項に求めた。

  1. 商標は以下の場合に登録が拒否される。

b) 識別性を欠く商標

  1. 上記第1項は、登録拒否事由が欧州の一部において存在する場合も含めて適用がされる。
  2. 第1項b)は、商品またはサービスのために登録申請された商標が、それが使用された結果として識別性を有することとなった場合には、適用されない。

本件は2002年にNestléがKit Kat 4本入りの三次元商標の登録を申請したときにまで遡る。欧州知的財産事務所(EUIPO)によって2006年に最終的に登録が認められた。

2007年、Mondelz UK Holdings & Services(Mondelez)はEUIPOにNestléの商標を取り消すように申請したが、EUIPOは、欧州内で使用されてきたという事実によって欧州商標に関する規則第7条第3項の定めるところにより、当該三次元商標は識別性を備えているとして、当該商標登録取消し要請を認めなかった。

Mondelezは上記決定を不服とし、欧州第一審裁判所に異議を申し立てた。当該裁判所は2016年12月15日に、識別性の具備はEUの一部の地域においてのみなされていることが証明されたとして2007年のEUIPOの決定を取り消す判決を出した。

Nestlé及びEUIPOを一方当事者とし、Mondelezを他方当事者として、当該判決に対して以下の議論をするため控訴がされた。

  1. Nestlé及びEUIPOは、欧州加盟各国で使用されることにより、当該商標は識別性を具備していると主張した。
  2. Mondelezは、欧州のいくつかの国において識別性の具備を証明できていないと主張した。

欧州司法裁判所は本事件を精査し、双方の控訴について以下の理由に基づいて認めなかった。

  1. Mondelezの控訴については、控訴された判決には取り消す理由がなく、判決の法的根拠についていくつかの修正が必要である。
  2. Nestlé及びEUIPOの控訴に関して、ある表象について固有の識別性が欠ける場合、それを商標として登録できるのは欧州全域において識別性を具備したと認められる場合である、と示した。

また、表象が識別性を具備したことを示す証拠は、各加盟国について具備したことの証明が必要というのではなく、例えば、各市場について一つの証拠を揃えれば良いとした。

最後に、欧州司法裁判所は、欧州第一審裁判所の判決について、当該商標の登録はベルギー、アイルランド、ギリシャ及びポルトガルの、識別性の具備が証明されていない他の地域及び加盟国については識別性具備について宣言しない形でなされたと結論づけ、同判決を認めた。

本判決の結果、EUIPOは使用の結果として識別性を具備した表象の登録について、欧州商標として維持することができるか、その登録を取り消すべきかを、再調査しなければならない。

 

 

ブランコ・ペドロ (Pedro Blanco)

ヴィラ法律事務所

 

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2018年10月26日