2020年3月12日付官報において公示されたスペイン登記・公証局2019年12月18日付決定によれば、既に登記がされた「Clorofila」という商号が存在していても「Clorawfila」という商号は使用可能であるとされた。
本件において、中央商業登記所はClorawfilaという商号申請について、既存の登記済み商号「Clorofila」Sociedad Anónima Laboralと音及び表記の類似性(商業登記規則第408条)が認められることを理由に、申請を認めなかった。中央商業登記所は、そのレポートにおいて、商号間の同一性の有無を判断するにあたっては会社の種別表記は考慮されないこと、及び、これら二つの商号間に表記の類似性(単に2文字の違い)及び発音の驚異的な類似性が存在することが述べられた。
しかしながら、スペイン登記・公証局は、以下の説明のもと、当該申請の却下を取り消した。
会社の商号において、同一性という概念はいわゆる「ほぼ同一」や「本質的同一」と呼ばれる範囲まで拡大して考えられるべきである。しかし、この同一性概念の拡大をするにあたって、同一性の禁止が有する最終目的、すなわち、特定の法的関係における責任者を一定の安定した枠内にて特定すること、を考慮しなければならない。このため、スペインの制度においては、同一商号は、それが絶対的又は本質的であったとしても、禁止されるが、単なる類似の場合は異なる。
商号の同一性の判断において、もし、規定されている基準の解釈、特に、「包括的または付随的な」用語又は表現、意味の不足する記号や接頭辞、明白な発音の類似性といった、大幅な不確定という言葉で覆われた概念についての解釈が制限的に行われる理由がないのであれば、大幅な緩い解釈や商業登記規則第408条に含まれる基準の2つ以上を同時に適用することが不可能だとする理由もない。この難しいバランスにおいて、商号の同一性の評価がなされなければならず、それら規則の解釈及び適用は、目的論基準に従って、各事案の状況に応じてなされなければならない。
上記の検討を考慮し、本件については、ClorawfilaとClorofilaという二つの名称の間に一定の表記の類似性が存在し、かつ、商業登記規則に商号の同一性の判断をする際に会社の種類の表記については切り離して考える旨の規定があるものの、この最小限の表記の違い(会社種別表記)によって、会社の識別という法の目的の効果においては明確に区別可能な商号となるという結果をもたらすことは事実であり、したがって、中央登記局の決定を支持することはできない。
露木 美加
ヴィラ法律事務所
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2020年12月24日